イラスト:ニシハラダイタロウ
イラスト:ニシハラダイタロウ

 いつかコラムで「三上」について書いた(「三上で行こう」参照)。三上とは「馬上(ばじょう)」「枕上(ちんじょう)」「厠上(しじょう)」から成る、アイデアが湧き出るときの原理・原則である。

 馬上とは馬にまたがりユラユラとしているとき(現代ならドライブか)、枕上とは枕の上でウトウトしているとき、そして厠上(厠はかわや、トイレのこと)とは厠(かわや)つまりトイレに入っているときである。いずれも、心身ともにリラックスしている状態にあることが多い。

 先のコラムにも書いたが、私は、この三上を物の本から知った。中国は宋の時代、今から約1000年も昔に活躍した欧陽脩(おうようしゅう)という政治家が「およそ三上とは、自分が文章を練るのに最も適した場所である」と書き残していたのである。それを読んだとき、私はまさに「目からウロコとはこのことか!」と思うくらいに納得したことを覚えている。アイデアが出るその瞬間とは、一体、どのような状態なのかを知りたいと思っていたし、それは私の命題でもあったからだ。

 この三上という原理・原則は、現代でも変わらない。だから、私は日常的に心身共にリラックスすることを実践しようと努めている。しかし最近、その三上に加えてもう一つの「上」があると思うようになったのだ。それは「呑みの席」の上、つまり、「呑上(どんじょう)」である。

 呑みの席というのは、それも気の置けない友人や仕事仲間と一緒に呑むときは、まさに三上的リラックス状態で、何の遠慮も上下の差別もない。お互いに、心身共に解放された状態にあるのである。

 そして、この呑上は思わぬアイデアが湧き出る場なのだ。アルコールが入って脳ミソも酔っぱらっているのにアイデアなんぞ出てくるわけはないとおっしゃる向きもあろう。しかし、出るのだ、これが。

 つい最近もこんなことがあった。