イラスト:ニシハラダイタロウ
イラスト:ニシハラダイタロウ
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 「六次産業で行こう」。そう書いたのは、2003年のコラム「【Vol.82】六次産業 」(システム・インテグレーションの連載)である。

 一次産業とは農業・林業・水産業で、二次産業とは鉱産物や農林水産物などを二次的に加工する工業や建設業、そして三次産業は商業・運輸通信業・サービス業など一次と二次産業以外の全ての産業を指す。この一次・二次・三次を足すと六次となる。つまり、一次・二次・三次を連続的につないで一体化する産業を六次産業というのである。

 具体的には、東北の山深い所で牧場を営む畜産業が、搾乳した牛乳を二次加工してアイスクリームやヨーグルトを作ったり、共同で立ち上げた精肉加工場で肉製品を作ったりして、それらを自社が経営するレストランで調理して食べてもらうという、まさに、一次・二次・三次を連続一体化した事業を展開しているという例がある。それまでほぼ一次産業しかなかった地域が六次産業化することで事業者数が増えたため、当然、雇用も増え、その地域は一挙に活性化したという。

 また、もともとは運送業者であった会社が一次産業を立ち上げ、農作物や海産物を加工してスーパー向けの食品にして配送するにとどまらず、スーパーの陳列棚に並べる作業までを行うという事業者も現れている。この事例では、運送業という三次産業の物流業者が一次・二次を取り込んでつなぎ、それを一体化したことによって他の物流業者を大いに刺激した。

 その結果、今では、その調理加工食品は大手居酒屋チェーンのメニューにまで及んでいるという。この運送業者は深夜に食品を店に運び込んで棚に並べるだけでなく、什器や食器もきれいにする。だから、明くる日に出勤してきた居酒屋の従業員は、洗浄されたお皿やお椀などの食器に盛り合わせて配膳するだけで済む。

 つまり、従来なら居酒屋の従業員がやるべき什器の掃除や食器洗い、さらには肝心の調理までもしてあげているのである。このような業態を、一体、何と呼べばよいのであろうか。間違いなく言えるのは、ただの運送業でない、ということだ。

 六次産業について書いたときから十数年が経った今、十次産業の時代になったと、私は言いたいのである。一次・二次・三次産業があり、その後に四次産業ができた。これらを足すと十次産業だ。

 この四次産業とは、何だろうか。