イラスト:ニシハラダイタロウ
イラスト:ニシハラダイタロウ
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 ニッチ(niche)とは西洋建築の用語で、壁面をうがって(掘って、開けて)作った凹み(へこみ、くぼみ)のことである。ここに、彫刻や胸像、モニュメントなどをすっぽりと収めて飾ったのだ。

 ここから「ニッチ市場」という言葉が隙間や適所という意味で用いられるようになったわけだが、飾るものの寸法に合わせて凹みをうがつので、その凹み自体は主役ではない。中に入るものが主役である。

 つまり、ニッチとは中に入るものにとって最適な空間を指しており、ニッチ市場は事業をする企業にとって最高に居心地の良い市場とも言えるだろう。

 だから、ニッチ市場に提供する製品・サービスを開発した企業は、真っ先に、最適なニッチ市場とはどうあるべきか、自社にとって最も居心地の良い市場とはどういうものか、そのビジネスモデルを決めなければならない。

 私は、このニッチ市場というかニッチビジネスには法則があると考えている。市場のサイズはもちろん、提供する製品・サービスの条件や特徴、そして何よりも、事業の進め方には法則があり、それは原理・原則でもある。これを私は「ニッチの法則」と呼んでいる。

 この市場は、ニッチ(ここでは隙間の意味)なので普段から目立たず、ほとんどの人が気付いていないところである。あるいは、気付いているとしても興味がないか興味が湧かない、一見、つまらなそうな市場だ。隙間だから見えにくいのか見えても小さいし窮屈そうだからかは分からないが、いずれにしても、誰もが一斉に勇み立つとは思えない。

 しかし、誰かが「おやっ」と気付き、続いて多くの人が「いけそう!」と感じると、一斉に参入する市場でもある。そして、皆が群がると「ブーム」になってしまい、もはやニッチではなくなってしまう。まるで禅問答のようだが、ニッチビジネスというのはそれだけ難しいのかもしれない。

 だが、このニッチビジネスで成功している企業をよく観察してみると、そこには法則があり、見事に、その法則にのっとって成功への道を歩んでいることが分かる。

 その法則とは次の3つだ。