だから、アマノジャクになろう

 先にも書いたように、世間の顧客も開発者も一般的には素直な人たちである。だが、もしも万が一にも天邪鬼に捕まり、商品やサービスの欠点や弱点をことさらのように言い立てられたら、それこそ、ひとたまりもないではないか。素直な気持ちの盲点を突かれ、まさに真逆の結果になってしまうのである。

 だから、開発者自身が時々、天邪鬼になって、開発している製品やサービスに自らクレームを見出すくらいの視点が必要なのである。

 しかし、これがなかなか難しい。もともと素直な人間に天邪鬼になれというのは、大げさに言えば、善人に向かって悪人になれ、あるいは、今で言うところの反社会的勢力・犯罪者になれというのと同じである。

 いくら仕事とはいえ、反社になるのはいただけないし、コンプライアンス上、許されることではない。だが、ここは心を鬼にして(笑)、完全な天邪鬼ではなく、ちょっと幼いアマノジャクになるのである。

 漢字で書かずにアマノジャクというだけで、一体、どこが違うのか。シャレも含めて、仮の天邪鬼という意味でプチ・アマノジャクなのである。

 素直な人に、その素直さを捨てて邪(よこしま)な気持ちになれというのは難しい。しかし、素直だろうと邪だろうと、開発した商品やサービスに不具合が生じ、それを天邪鬼的な人が最初に発見したら、それ以上多くの人に迷惑を掛けることはない。

 つまり、クレームを未然に防いだことになるのだから、それはそれでうれしいことではあるまいか。それも、リリース(発売)する前に発見できたらなおさらだ。

 だから、アマノジャクになろう。いささかの抵抗はあろうが、あえてプチ・アマノジャクになることが、クレームを未然に防ぐことになるのである。

 ところで、私はどうやってアマノジャクになるかって?

 ははは、それは簡単。だって、私は生まれつき天邪鬼なのである。エヘン!