顧客をよく観察することが…

イラスト:ニシハラダイタロウ
イラスト:ニシハラダイタロウ
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 面白いもので、誰もが自分では掴めない感覚は当たり前だが知らなかったこと。それを掴んでもらうことは、極めて新鮮なのだ。これが、届かぬところを掴めということだ。

 こうして届かないところを掴むには、顧客をよく観ることだ。こちらの勝手、と言ってしまうと言い過ぎだが、そのくらいに客観的に観るのがよい。

 そして、顧客をよく観察するには、およそ二つの視点で観るのが肝心だ。

 一つはプラス思考の顧客で、成功体験優位の顧客に対する視点である。そのような顧客には、今まで成功してきたことはよいとして、困難に陥ったときどうするか、そんな視点で気持ちを掴めばよい。そう簡単には行かないようにあえてハードルを高くすると、新鮮な興味がわいてくるのである。

 もう一つは否定的になっているマイナス思考の顧客に対する視点である。それは、成功体験の仮想現実を示すのである。上手く行った場面を示し、とにかくチャレンジする気持ちを奮い立たせるために、怖気(おじけ)付いて疑い深くなっている気持ちを認識させるように、あえて痛い(弱気な)ところを掴むのである。

 いかがだろうか、届かぬところを掴むこと。私は、ある意味で逆張りとも言えるこの視点で開発を進めてきた。顧客の求めるものに対応するのも大切だが、実は、顧客自身が未だ知らないニーズもある。それを知ってもらうのも、開発の原理原則なのである。

 ところで、私の届かぬところはどこかって? ははは、カミさんに言わせれば、私はほとんどすべてが行き届かないらしくて、「不行き届きの元祖」と言われている。トホホ…。