一張羅(いっちょうら)とは、その人が持っている衣服の中で最もよいものだ。中には、他に持っていなくて、たった一つでも一張羅と言う人もいるが、今回の話ではそのケースは無しとする。

 さて、開発においても一張羅はとても大事なことであり、原理原則とも言えるのだ。

 言うまでもなく、開発とは顧客のニーズに対応することである。新しいサービスが欲しいという顧客には新しくて最適な事業を、新しい商品が欲しいなら最適な新商品を開発して提供するということだ。

 つまり、顧客に最高で最適という、言い換えればとびっきりの事業や商品を提供するために、自社の資源を最大限に生かして真剣に取り組むこと、それが開発なのである。

 だから、開発は真剣勝負で全力投球。決して手抜きをしてはいけないのである。

 しかし、人間というのは慣れると手抜きをするようになる。これは本能のようなもので、毎回、向かう姿勢は真剣勝負でなければならないはずが、少しずつゆるくなり、いつしか惰性という都合のよい感情が入り込んでくる。

 まあ、毎回真剣勝負で全力投球では疲れるということもあるが、トップを走り続けるアスリートやアーティストが手抜きをすることがあるだろうか。それと同じで、顧客のためになるなら全力で取り組むしかないのである。

 だがしかし、言うのは簡単だが、中々それを実践するのは難しい。実践さえすれば、一流トップになれるのだろうが、実践できないから難しい。これが現実だ。

 なにか、卵が先かニワトリが先かという議論になってしまうが、私はそこに、一張羅の精神を持ち込むことが大事だと考えているのである。