開発を進めるとき、ドメイン(事業領域)を外すなと言う人がいる。確かに、今まで何とかやってきた事業だから、そこを外すということは、未知の世界に出ていくようなもので、どんなリスクや困難が待ち受けているか分からないと思うのだろう。まして、不測の事態に対応する体制ができていないという、拭い切れない不安があるのかもしれない。

 しかし、開発とはもともと新しい世界に入っていくことである。やってみなければリスクも困難も分からないではないか。もしも、やらずに分かるのなら、誰もが安全だと思って参入するに決まっているし、そこには新規性も新しい価値もない。

 不思議なものだ。新しいことを始めるとき、最初から枠(事業領域)を決めるなんて、自ら進んで井の中の蛙になろうということか。

 繰り返すが、開発とは新しいことの挑戦することだ。新しい事業、新しい商品やサービスを開発して、自らの会社をより良くするために開発するのである。それなのに、最初からタガをはめてしまうなんて、発展しないように自粛するようなものだ。

 開発をしようと決めたら、何でもアリ。これが最も基本的な姿勢である。ニーズを捉え、顧客が欲するものが見えたなら、それを提供するために、ひたすら顧客のために何を優先するか、それが全てである。

 なのに、顧客はこれがイイと言うけれど、うちの事業とは違うからできないと言ってしまったら、もう、何もできないではないか。

 よく、何でもアリと言うと、そんな節操のないことを…という人がいる。節操とは、節義(人として正しい道を踏み行うこと)を固く守って、自分の信じる主義・主張を守り通すことだが、そもそも開発とは、顧客のためになるモノやコトを提供することであり、それが本当の節義である。

 それを、顧客のためになることは分かっていながら、自社の道とは違うからやらないと言ったら、自社が正しくて他は違うと言うのと同じ。まさに唯我独尊。こんな傲慢なことが許されるはずはない。

 そうか、何でもアリという、このひびきがよくないのかもしれない。何か、いい加減にことを為そうという、軽い言葉と受け取られるのかもしれない。