よく数が欲しいと言う。要するに売り上げは多いほどいいと言うのである。しかし、本当に売り上げが多ければ多いほど会社は良くなるのであろうか。しかも、その売り上げを上げるのが開発の目的だとしたら、安かろう悪かろうでも何でもかんでも、売ってしまえばいいと言うのと同じである。

 私が知ることのできる範囲で、いかに製品の付加価値を重視しているかを測る尺度は経常利益(経常)である。特に、ものづくりのメーカーならば、ここを見ると一目瞭然だ。

 その経常が、なんと売上比率で25%以上という会社を、私は2社知っている。1社は特殊ポンプメーカーで、もう1社は歯科医療に使われる器具を製造販売している会社。いずれも、知る人は知っている会社だが、共通しているのは、数を追わないのである。

 普通の会社なら、数が出ないものや期待できないものを開発するのを憚る(はばかる)。しかし、この2社は違うのである。違うと言うより、数が出そうなものはあえて敬遠してやらないのである。そうして追及しているのは、製品の価値なのである。

 価値とは、製品ならその製品がどのくらい役立っているのか、その値打ちのことである。ユーザーが使ってうれしいもの、買い手が高いとか安いとか、価格のことを気にせずに、あるいは、高いと感じても買わざるを得ないくらい、その製品が役立つものであるということだ。

 この2社の工場に行くと、2社が示し合わせているかのような光景を目にする。とにかくキレイなのだ。

 別に、お金があるから清掃業者にお金を掛けているわけでもなく、社員が自発的に5Sを実行しているのである。

 言うまでもなく、5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)のことであるが、なぜそれが自発的にできるのか、それは、自社製品の価値、あるいは、自分たちの仕事の価値を理解しているからである。