田中 栄=アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー
田中 栄=アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー
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 「どうすれば新しいビジネスを創れるのだろうか?」。多くの企業が今、この難問に対する答えを必死に考えています。私はこれまでいろいろな業界を見てきました。そうした経験から、新しいビジネスの創出を成功させるポイントは2つあるように思います。1つは、社外に門戸を広く開くことを会社としてコミットすること。そしてもう1つは、現場の裁量で使える投資マネーを用意することです。

 先に挙げたポイントである「社外に門戸を広く開くことを会社としてコミットすること」というのは、社内だけではアイデアにもリソース(経営資源)にも限りがあるからです。ビジネスプランのリアリティー(現実性)は、具体的な企業名や個人名がどこまで盛り込めるかで決まります。外部の資金や人材、パートナーなど、具体性のあるビジネスプランを組み立てるには「人脈」が必須です。そのためには、時間と手間をかけて信頼関係を育むことが不可欠。にもかかわらず、近年はセキュリティーやコンプライアンス(法令遵守)を重視するあまり、内にこもる企業が少なくありません。しかし、失敗やリスクを恐れるばかりでは何も始まりません。今は、チャンスを失うデメリットの方がはるかに大きいのです。新しいビジネスを創るためには、まず企業文化から変える覚悟が必要です。

 もう1つのポイントの「現場の裁量で使える投資マネーを用意する」というのは、アイデアを具体的な形にするために試作品を作ったり、簡単なテストマーケティングを実施したりするためのお金を準備することです。投資マネーといっても、それほど大きな金額が必要なわけではありません。日本の会社を見ていると、研究開発(ものづくり)には多額の資金をつぎ込む一方で、それを事業化するために予算をほとんど使わないというケースが珍しくありません。その結果、何億や何十億円も掛けた研究成果が人知れず消えています。私はそんな例をたくさん見てきました。当たり前のことですが、「作る」ことと同じくらい「売る」ことは大切なのです。

 新しいことにチャレンジするためには、人や資金、意識などの環境整備が欠かせません。勢いのある企業には、「新しいビジネスを恒常的に生み出す仕組み」があります。そのような企業は「事業開発部」といった専任部門を持ち、営業部門以外でも多くの人が外に積極的に出ているのが特徴です。最近はオープンスペースを設けて、社外の人々を組織的に呼び込む会社も増えました。これらの目的は社外情報の収集や人脈構築、ビジネススキームの検討などであり、「営業マン」の動きとは一線を画します。「ビジネスを創る人」=「ビジネスマン」の動きなのです。