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 私は仕事柄、いろいろな分野で新しいビジネスに挑戦する人々を見ています。ベンチャー企業は資金も人材も実績もありません。大企業や専門企業がひしめき合う中、どうすれば成功できるのかと悩んでいる人は少なくありません。

 ベンチャービジネスは従来にないものであり、内容もさまざまです。そのため、「こうすれば必ず成功する」という方法論はありません。でも、こうしたパターンであれば成功しやすいといった「王道」のようなものが2つあると私は感じています。

 第1のポイントは「まだ誰もやっていない、全く新しい分野に挑戦する」ということ。当たり前のことですが、マーケットが確立された分野には既にプレイヤーがいます。彼らは資本力や実績、認知など、あらゆる分野で先行しています。そこにベンチャー企業として新たに参加し、同じ土俵で勝負しても、普通にやっていてはまずひっくり返すことはできません。

 しかし、全く新しいマーケットであればリスクが大きい代わりに、プレイヤーは誰もいません。そして何より重要なのは、小さくて狭いマーケットとはいえ、その分野で自分が「ナンバーワン」になれるということです。

 「ナンバーワン」になることが、なぜそれほど重要なのでしょうか。

 世界で2番目に100m走が速い人は誰か知っていますか? 日本で2番目に高い山を知っていますか? たぶんほとんどの人は知らないと思います。「×××と言えば○○○」。専門的にはこれを「純粋想起」と言います。お客様が「×××」を必要とした時、1番手は2番手以降に対して圧倒的に有利な立場になります。だから、どれほどニッチな市場であっても「ナンバーワン」になることが重要なのです。

 どのようなビジネスも最初はニッチ市場です。「先が読めない」ことは、前向きに考えれば、これから想像もつかないほど大きく成長するかもしれない、ということでもあります。どうなるか分からない市場だからこそ「挑戦」する価値があるのです。

 そして、後発で大企業が追いかけてきても、負けないための鍵は「一所懸命」。つまり、自分のアイデアを信じて1点に集中し、その狭い分野でフルラインアップをそろえることです。こうして「圧倒的なナンバーワン」になることが重要となります。大企業といえども、あらゆる分野でフルラインナップをそろえることは不可能だからです。

 大企業には全く新しいマーケットには参入しにくい、という事情があります。有望な分野でも最初はニッチ市場で、市場規模は数百万~数千万円ということは珍しくありません。ところが、大企業は人件費や固定費が高い上に、数百億~数千億円といった売上規模がないと本気で取り組みにくいという現実があるのです。