田中 栄=アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー
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音声認識・対話機能を備えたスピーカー装置「Amazon Echo」
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 米Amazon.com社の音声アシスタント(音声認識・対話機能基盤)「Alexa」が、「iOS」アプリケーションソフトウエア(以下、iOSアプリ)としてリリースされることが発表されました。同社が提供する音声認識・対話機能を備えたスピーカー装置「Amazon Echo」で使われていることで話題の技術です。

 この発表を受け、iOSで使える既存の音声認識機能「Siri」などを押しのけて「Alexaが音声アシスタントの覇権を握るかもしれない」という見解が一部でささやかれています。

 しかし、本当にそうでしょうか? 私の見方は違います。AlexaとSiriは「音声アシスタント」という表面的な役割は同じですが、全く別物だからです。そのため、AlexaがSiriの地位に取って代わるというのは、認識が少しずれている気がするのです。

 Siriはあくまでも「Apple社のためのサービス」です。米Apple社はiOSを他社に利用させますが、Siriの音声認識技術を他社に公開することはないでしょう。他社を気にせずに自由に開発したいからです。他社の開発をサポートするのは大変だからというのが本音ですが、これは昔から変わらない同社のポリシーです。

 これに対してAmazon社は、サードパーティーが音声インターフェースを実装できるようにAlexaの技術を公開しています。Alexaの実体は「Alexa Voice Service」であり、同社のクラウドコンピューティングサービス「AWS(Amazon Web Service)」の一部です。AWSはクラウド時代にける“OS”であり、Alexaは入力インターフェースであるIMEに相当するものです。

 つまり、AlexaはAWS=OSの一部であり、これは「クラウドOS/プラットフォーム」を巡る争いであると理解しないと、本質を見誤ります。AWS+Alexaの競合は、米Google社の「GCP(Google Cloud Platform)」+ 「Google Assistant」や、米Microsoft社の「Azure」+「Cortana」、米IBMの「Watson」などであり、Siriではないのです。