田中 栄=アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー
田中 栄=アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー

 人工知能に置き換えられない仕事とは何か?──。最近、いろいろなところでこの問いが投げ掛けられています。人工知能が代替できない人間の価値、それは、「創造力(Creativity)」と「伝える力(Communication & Presentation)」だと私は考えています。

 それはなぜか。ビジネスとは、突き詰めれば「人を動かす」ことだからです。人を動かすとは、すなわち「心を動かす」こと。これは人間にしかできません。

 そして、「心」を動かすためには「創造力」が必要です。創造力とは、世の中にない新しい「価値」を生み出す力のこと。そして価値とは、「美しい」「気持ちいい」「かっこいい」「心地良い」といった感情に働きかけるものです。こうした感情が「欲しい!」という気持ちを喚起するのです。

 例えば、工具の世界で大ヒットを記録した「ネジザウルス」という製品があります。みなさんには、ねじ頭の十字穴や溝がつぶれてドライバーが使えなかったという経験はありませんか。こうした場合に、ねじ頭をしっかりと挟んで簡単にねじを回せるペンチがこの工具なのです。開発したのは、大阪市にあるエンジニアという中小企業です(同社による工具の説明)。

 興味深いのは、発売当初、この工具が売れなかったこと。当時の製品名は「小ネジプライヤー」でした。発売した月の売り上げ本数はわずか15本。これではダメだと、同社は名前を変更することを決めました。そして、社内公募で集まった案の中から圧倒的な存在感を感じさせた「ネジザウルス」という名前を選んだのです。