田中 栄=アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー
田中 栄=アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー
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 私は「未来を予測する」という仕事をしています。「将来のニーズに応える新しいビジネスを創りたい」という想いに応えるためです。この仕事をしていると、特に大企業の経営者の多くから「新しいビジネスが出てこない」という悩みをよく聞きます。ビジネスプラン・コンテストや社内ベンチャー制度、異業種交流会など、さまざまな取り組みをしているのに成果がなかなか出ないと言うのです。それは一体なぜでしょうか?

 その理由は、大企業に働く人達が「リスクを恐れているから」という一言に尽きると私は考えています。

 新しいビジネスはリスクだらけ。予定通りにいかないのはむしろ普通です。「できない理由」や「失敗する可能性」ならいくらでも並べられます。ビジネスは実際にやってみなければ分からないことがたくさんあります。たった1つの思いがけない出会いで状況が一変することなどはよくあることです。こうしたことを含めて「プラン」として全て予測することは現実的には不可能です。

 会社組織の中では役員会などの承認プロセスがあります。膨大な資料作りに追われ、上司や周囲への説明に疲れて、気が付くと最初の情熱を失ってしまっている。こうした例をこれまで数えきれないほど私は見てきました。どれほど書類を作っても、紙や言葉で「うまくいく」と証明することは限界があります。

 大企業には、いわゆる「優等生」が集まっています。優等生は、その頭の良さを「リスク回避」に使おうとしがちです。日本の学校教育は、いかに失敗しないか、いかに間違えないかを重視しているからです。さらに言えば、勉強や理論でビジネスができると考える人も依然として多く見受けられます。

 しかし、ちょっと考えてみてください。勉強や理論は、「過去」を普遍的な知識として体系化したものにすぎません。対照的に、これからの社会は「インターネットの普及」や「グローバル化の加速」、「高齢者の増加」など、過去の延長線にはないものです。新しいビジネスをするために、いろいろなことを学ぶことはもちろん大切です。でも、新しいビジネスに理論や教科書はありません。過去の常識を破るからこそ新規事業なのです。