オンライン診療の可能性は…

武藤 医療とITは、まさに臨床医としての側面と研究的な側面の両方を備えておく必要があると感じます。しかし先生みたいな方は例外として、あまねくその考え方を身につけられるものでしょうか。

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永井 私はもともと数字に関しては違和感がありませんでした。研究は分子生物学を中心に展開しましたが、並行して臨床研究やデータベース作りをしてきました。心の問題は別ですが、分子生物学をはじめ多くの医学分野では、最終的にデジタル情報に変換することができます。ゲノム、プロテオミクス、メタボロームなどのウェット系の実験では、研究者自身が処理できないほどの膨大なデータが生まれています。データからいかに知識をつくるかは、あらゆる科学で喫緊の課題です。

 これからの大学では、データ・サイエンスの教育が重要です。いずれウェットとドライの両方の研究ができる人材が育つと思います。

 研究者は「一点突破、全面展開」できる発見をしようと努力しますが、生老病死のような問題は単一の要素に還元することは必ずしもできません。「一点突破、全面展開」を目指しつつも、それでうまく行かないときは、別のアプローチで挑戦する技術を身につけてほしいと思います。

武藤 私はオンライン診療を手がけているのですが、先生はそのようなITシステムをつかっての診療はどのような可能性を感じていますか。

永井 外来医療では、自宅における重篤な発作をどう防ぐかにもっと焦点を当てる必要があります。重篤な発作の一歩手前からは一刻を争う状況ですから、早期に発見して、発作を予防するためにも、遠隔医療に対する期待は大きいと思います。