最初から正確さを求めることはできない

武藤 一方、医療でIT化を進めるときに、どの瞬間のデータを集めていけば本当に正確なものになるかわからないといった課題も存在します。

永井 最初から正確さを求めることはできません。取り組みを繰り返すことによって、だんだん分かることだと思います。まずはデータを標準化して収集し、簡単なことから取り組む、その過程で学習して、徐々に複雑な課題に挑戦することになると思います。

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武藤 足元のデータをおろそかにしない姿勢はどなたから学んだのでしょうか。

永井 東京大学第三内科に入局したときの小坂樹徳教授です。実験でも臨床でも、データを大切にしてしっかり学べと教えられました。まずは足元のデータを見つめて、本質を見極めることの重要性を何度も教えられました。

 そうした気持を大切にして診療をしていると、医療行為の文脈がまったく違ってきます。臨床医にとってはこのセンスをいかに磨くかが重要です。若い時から自分なりにトレーニングすることです。これは恐らくビジネスでも同じでしょう。

武藤 おっしゃる通りです。私も一度コンサルタントを経験して、医師と思考過程が似ていると感じました。まず、その会社(患者)の状況を見て、取れる限りの情報を得てストーリーを作っていきます。

永井 患者も同じですね。仮説を立てて、データを集めて分析する、仮説が間違っていたら新しい仮説を作るわけです。