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HOMEスキルアップクリーンテック研究所から > 自動運転時代、ビジネスの主役は?

クリーンテック研究所から

自動運転時代、ビジネスの主役は?

新事業や経営を担う次世代リーダー向けセミナー「テクノロジーインパクト2030」から(3)

  • 伊藤元昭=エンライト
  • 2017/09/14 11:00
  • 1/4ページ
本稿は、日経ビジネススクール(日本経済新聞社、日経BP社)が主催する次世代リーダー向けセミナー「テクノロジーインパクト2030」の講師に、各研究分野でのテクノロジーの進歩が近い将来に何を起こそうとしているのか、ビジネスにどのようなインパクトを与えると考えているのかを聞いたものです(関連記事1関連記事2)。

 実用化に向けた取り組みが加速している自動運転車や電気自動車は、単なる技術革新ではない。その実用化は、クルマという工業製品の存在価値自体を一変させ、自動車ビジネスの大変革をもたらすことになるだろう。

 一方で、国内外の自動車産業の関心は、自分だけの愛車を持ちたいという所有欲を満たすビジネスから、社会が求める理想的な人やモノを運ぶ手段を提供するビジネスへと、徐々に移りつつある。これに伴って、自動車産業で生み出す価値の源泉が、ものづくりの巧拙からモビリティーサービス体験の質へと移ってきた。

 自動車産業、特に日本の自動車産業は完成車メーカーを頂点とした系列企業を従えた階層的ピラミッド型業界構造を採ってきた。これは、極めて複雑な機械製品であるクルマを、効果的かつ効率的に作り上げるために最適化した業界構造だった。ところが今、人工知能(AI)やネットワークなど系列企業にはない技術が、クルマの性能や品質を大きく左右する時代になった。そのうえで、クルマの商品価値自体を再定義する必要に迫られている。自動車ビジネスのかたちは、大きく変貌しないはずがない。

 自動運転車の実用化に伴う、自動車ビジネスと業界構造の変化について、名古屋大学 COI 未来社会創造機構 客員准教授 野辺継男氏に聞いた。独自仕様パソコン「PC-98」全盛期のNECで世界標準のAT互換機を事業化、その後は国内最大級のオンラインゲーム会社の立ち上げ、日産自動車ではテレマティックサービスを統括するなど、時代を先取りする異色の経歴を持つ同氏が、次世代の自動車ビジネスの姿について大いに語った。

君子豹変する欧米メーカー

――世界中の自動車メーカーが、自動運転車の開発を加速させています。数年前までは、グーグルによる自動運転車開発を傍観していたように見えたのですが、なぜ急展開しているのでしょうか。

野辺 継男氏(のべ・つぐお)氏
1983年早稲田大学 理工学部 応用物理学科卒業、日本電気入社。パソコン事業に関連した海外事業、国内製品技術、及びソリューション事業関連で国内外の各種プロジェクト立ち上げ(放送関連や各種インターネット利用技術等に関する商品企画及び新事業開拓)。88年ハーバード大学 ビジネススクール留学、同大学 PIRPフェロー。2000年同社退職後、オンラインゲーム会社立ち上げを含む複数ベンチャーを立ち上げ、CEO歴任。04年日産自動車入社。チーフサービスアークテクト兼プログラム・ダイレクターを経て、12年同社を退社し、インテル入社。名古屋大学 COI 未来社会創造機構 客員准教授も務める。

野辺氏 確かに、欧米の自動車メーカーは自動運転時代の到来を見据え、ビジネスの変革を急いでいます。特に昨今のディープラーニング開発の急伸もあり、グーグルがこれまで注力してきたような「人間が運転に全く介在しない完全自動運転」の実現性が高まったと見ているためです。

 実際、カリフォルニア州自動車両局( Department of Motor Vehicles:DMV)に報告されているグーグル/ウェイモのデータからは、自動運転車の開発達成度が急激に高まっていることが読み取れます。公道上での自動運転試験中は、危険が予測された場合のみドライバーが運転に介入します。2015年のデータでは平均1244マイルに1回の介入であったものが、2016年には平均5000マイル以上の走行に対して1回だけだったことが示されており、ある範囲で人間の運転能力を超えた可能性を示しているとも言えます。

 自動車メーカーも、自動ブレーキなど先進運転支援システム(ADAS)の開発を通じて、クルマの自動化を段階的に進めてきました。しかし、グーグルが自動運転の開発に投入したディープラーニング(深層学習)技術による認識能力や強化学習の威力は、自動車メーカーの予想をはるかに超えていたのです。指数関数的に進歩するICTの高度化に伴い、今後2、3年間でソフトウエアの運転能力の精度がさらに高まり、完全自動運転の商用化が加速される可能性が極めて高い状況になっています。

 自動運転車が自社以外の企業、しかも他業界の企業の手で実現されることは、自動車メーカーにとって看過できない事態です。完全自動運転になると、自動車ビジネスの構造が一変し、技術や製品の開発で主導権を取れなくなる可能性があります。そうした可能性に気づいた欧米の自動車メーカーは既存自動車ビジネスの危機ととらえ、ビジネスモデルの急展開に走っています。

 さらに米国では政府もこうした自動車産業の変革期に急速な動きをみせています。9月6日、米国議会下院で、超党派の支持を得て自動運転法(Safely Ensuring Lives Future Deployment and Research In Vehicle Evolution Act)と呼ばれる法案が通りました。今後上院を通過し大統領の署名を得れば、人が全く運転に関与しない完全自動運転車とそれを利用するモビリティーサービスの商用試験が今後1、2年で全米に急拡大する可能性があります。この背景には、完全自動運転というクルマとICTの融合を絶好の機会と捉え、もう一度米国の自動車産業を世界一にしようという期待があると見られています。

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