自動運転の時代になると、自動車がネットワークにつながるのが当たり前になる。もちろん、単にネットワークにつながり、外部から情報を取得するだけなら今の自動車でも実現できている。

 例えばカーナビゲーション向けの情報配信システムであるVICS。1996年にサービスを始めたVICSは、広域情報はFM多重放送で、走行場所近くのエリア情報は道路付近に設置した光ビーコン/電波ビーコンを使って、渋滞や交通規制などの道路交通情報を24時間365日配信し続けている。VICS車載器の累計出荷台数は2016年7月時点で5100万台を超える。「コネクテッドカー」の先駆けとなるシステムと言えるだろう。

米テスラモーターズのSUV「モデルX」。同社は先進的な運転支援機能を搭載するなど、自動運転に積極的だ
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 では、自動運転の時代では何が変わるのだろうか。違いは、通信で入手するデータの使い手にある。これまではドライバーが使い手だった。これが自動運転車になる。自動運転車は、最新のデータやプログラムをネットワーク経由で取得することを前提に設計されている。データやプログラムを入手できないと、自動運転機能が働かなくなったり、誤った情報に基づいた判断や制御が実施されて事故を起こしたりしかねない。ネットワークに常時つながっている環境を維持することは、自動運転車が正常動作するための必要条件となる。

 ここで気になるのがサイバーセキュリティーだ。ネットワークに常時つながっているということは、常時サイバー攻撃の脅威にさらされていることにほかならない。もし、自動運転ソフトが悪意ある攻撃者の手で書き換えられたら、人命にかかわる事故が起こるかもしれない。

 多数の自動運転車のソフトが同時に書き換えられてしまえば、大規模災害につながる危険もある。サイバーセキュリティーをどう確保し、どう維持していくのかは、社会が自動運転車を受け入れるために解決しなければならない重要な課題といえる。