前野 Ziba社の採用面接は、ものすごいな。

濱口 僕の設計ですが(笑)。最後に面接でもう一つ重要なことがあるんです。それは「褒めまくる」ということ。褒めるときには、きちんと具体的に「あそこが良かった」と褒めます。だって、面接で落とした人が、数年後にクライアントとしてやってくるケースがあるんですよ。そのときに「クッソー!」と恨まれていたら困るじゃないですか(笑)。

前野 なるほど。日経テクノロジーオンラインを読んでいる技術者には、どちらかと言えばロジカル側にいる人が多いと想像します。直感側の素養を磨くトレーニングはありますか。

濱口 大企業の開発現場では、ちょっと考えては文献を調べてみたりと時間をかけてしまいがちです。それを変えて、「今から5分後に社長の前に行って、新しい開発の答えを出さなければならない」という想定で実際に答えをひねり出してみるんです。

 多くの人は、時間が無限にあると思っているし、「今日答えを出さんでも、明日また考えればいい」と考えてしまう。そうではなく、短時間で無理やり答えを出すんです。これをやるとカオス状態になるので、脳みそが直感側に働く。これをクセにしてしまうことが大切です。上司との30分ミーティングなら、「ひと言で説明して帰ってくるつもりでまとめてみる」ということも、とても良いトレーニングになります。

前野 トレーニングは、仕事の現場でやった方がいいと。

濱口 いろいろなワークショップに参加して、「新しいペットボトルを考えてみましょう」と言われても、例えば自動車会社の人にとってはどうでもいい話でしょう? やはり自分の仕事の中でアウトプットを出すトレーニングをした方がいいと思いますよ。

 僕はビジネス本を一切読みません。だって、仕事場は戦場ですからね。1億円の対価をもらって、レポートの数や厚さではなく、アイデアでクライアントを納得させなければならない。もし1度でも失敗して「1億円も払ったのに何もできなかった」というウワサが広まったら、もう仕事はこない。極限の緊張感で仕事をしています。戦場で戦術の本を読んでいたら、その間に殺される。僕らは戦場にいるのだから、戦場の中でトレーニングするしかないんですよ。

(写真:稲垣 純也)
(写真:稲垣 純也)
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