濱口 砂漠に飛び出す第2の原則は「能力」です。「Potential」ですね。とても体が弱いのにサソリがすんでいるところに出て行ったら死んじゃいます。

 イノベーションを起こす能力は、段階を経て発揮できるようになるんです。それは、「知っている」「分かっている」「できる」「他人をリードできる」、最後に「他人に教えられる」という順番だと僕は見ています。

 例えば、「セミナーへの1時間参加」「3日間コースの参加」「1週間プログラムの体験」「3カ月プロジェクトに携わる」「一緒に1年間プロジェクトを10個やりまくる」という体験があるとしましょう。

濱口秀司(はまぐち・ひでし)<br>米Ziba Design社Executive Fellow、monogoto代表。大阪生まれ。京都大学卒業後、松下電工に入社。研究開発、全社戦略投資案件の意思決定分析担当などを経て、1998年米国コンサルティング会社Zibaに参画。世界初のUSBフラッシュメモリーをはじめとする数々のコンセプトづくりをリード。IDEA金賞など数々のデザイン賞を受賞。その後、パナソニック電工の新事業企画部長、同社米国研究所の上席副社長、米国のベンチャー企業のCOOを歴任し、 2009年Zibaにリジョイン。2013年より自身の実験的ビジネスデザイン・ファーム「monogoto」代表を務める。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科特別招聘教授。京都大学デザイン学特命教授。大阪大学医学研究科招聘教授。ドイツ「レッドドット・デザイン賞」審査員。イノベーション・シンキングの世界的第一人者(写真:稲垣 純也)
濱口秀司(はまぐち・ひでし)
米Ziba Design社Executive Fellow、monogoto代表。大阪生まれ。京都大学卒業後、松下電工に入社。研究開発、全社戦略投資案件の意思決定分析担当などを経て、1998年米国コンサルティング会社Zibaに参画。世界初のUSBフラッシュメモリーをはじめとする数々のコンセプトづくりをリード。IDEA金賞など数々のデザイン賞を受賞。その後、パナソニック電工の新事業企画部長、同社米国研究所の上席副社長、米国のベンチャー企業のCOOを歴任し、 2009年Zibaにリジョイン。2013年より自身の実験的ビジネスデザイン・ファーム「monogoto」代表を務める。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科特別招聘教授。京都大学デザイン学特命教授。大阪大学医学研究科招聘教授。ドイツ「レッドドット・デザイン賞」審査員。イノベーション・シンキングの世界的第一人者(写真:稲垣 純也)
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 「1時間やって“知った”」「3日間やったら、なんとなく“分かってきた”」「7日間やったら、“できるようになってきた”」とリニアに能力が伸びるケースもあります。でも、人間にはバラエティーがあるから、例えば今まで悩み続けていたけれど、セミナーを聞いた瞬間に「うぉー!」と新しいことができるようになるラッキーな人もいます。でも、こういう人は1000人に1人くらいしかいません。

 また、徐々に分かってきてはいても、実力を発揮できるようになるのは10年後になってしまうような逆のパターンの人もいます。そういう人は別にイノベーションなんか起こさずに他の仕事をした方がいいわけです。

 「できる」を目指すのか、「他人をリードできる」を目指すのか。どの辺まで目指すかによって、例えば、1年間頑張っても到達できない人はポテンシャルがないと自己判断して、やめたほうがいいと思います。ここは見極めないといけないんです。ちょっとこれは悲しい話なんですけど、能力っていうのはありますね。

前野 どのくらいの人に「できる」という能力があるのでしょう。言葉でいえるものじゃないかもしれませんけど。

濱口 僕の感覚でざっくりいうと、半分くらいは結構厳しいかもしれないですね。

前野 ということは、日本人の半分はイノベーターになれるということじゃないですか。