砂漠に飛び出すために必要な原則
前野 イノベーションを起こしたいとか、起業したいと考える人に必要な条件はありますか。
濱口 そうですね。人間が生活する環境で考えてみましょう。
まず、人間には「この範囲だったら大丈夫」と考える生活ゾーンがあります。例えば、緑が豊かでフルーツがなっていて「ここにいると快適で安全」と思えるゾーンです。でも、何か新しいことを考えたり、起業やイノベーティブなことに踏み出そうと思ったら、この安全ゾーンを出なければなりません。出て行った先は砂漠で、サソリがすんでいるかもしれない。見たこともない世界で不確実性がいっぱいある。
前野 辛くて怖そうですね…。
濱口 そういう砂漠に飛び出すために必要な原則があります。
第1に「目的、ゴール」、つまり「Purpose」ですね。これは「やりたいこと」そのものの場合もあるでしょうし、「あんな人になれたらいいな」「あんな感じでイノベーターになったらええんや」「あんな事業を起こせたらいいな」というようなロールモデル、ケーススタディーという場合もあるでしょう。
前野 ゴールは具体的な方がいいですか。
濱口 砂漠であっても、遠くにオアシスが見えたり、井戸が見えたりしたら、そこへ行こうと頑張れるから、具体的なゴールが見えているといいですね。ただ、目的の設定は難しい。目的のインパクトが小さい、目的レベルが低いケースがあるからです。
目的には、階層構造があります。例えば、「水を飲むためのコップを作る」という目的と、「お茶を楽しむためのコップを作る」という目的では、考えられることが変わってきますよね。水を飲むだけが目的だったら、穴が開いていて水が漏れたら困るけれど、「楽しむ」が目的ならば、穴が開いていて多少漏れてもいいかもしれない。
目的によってゴールは変わってくので、すごくいい目的を見つけるということが重要です。イノベーションを起こすコツの一つは、一段上の目的階層から俯瞰することです。多くの人が想定している目的階層では解決できない事象でも、一段上にいると違いますよね。これは基本です。
前野 なるほど。