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HOME新産業異業種連携イノベーションの幸福学 > AIがアイデアを出してくれる時代にすべきこと

イノベーションの幸福学

AIがアイデアを出してくれる時代にすべきこと

前野教授、太刀川瑛弼さんと「天才力」について語り合う(その4)

  • 構成=市川 智子
  • 2017/08/28 05:00
  • 1/3ページ
慶應義塾大学大学院の前野隆司教授と、デザインファーム「NOSIGNER(ノザイナー)」の代表を務める太刀川瑛弼さんによる対談の最終回。デザインを通して数々のイノベーションを起こし続けた太刀川さんが自らのこれからを語る。将来像は「デザインの可能性を拡張する人」というが、「人工知能(AI)の台頭や誰もがいいアイデアを出せる考え方をマスターすると、太刀川さんのオリジナリティーがなくなるのでは?」という前野教授の問いから、2人の対話はいいアイデア創出と世界平和の関係に進んでいく。
前野教授(左)と太刀川さん(写真:加藤 康)

いつまでも雑草でいたいと思っていそう…

前野 太刀川さんの今後についてうかがいたいんだけれど、どう生きていこうと思っているんですか。死ぬまでいろいろな仕事をしていくイメージですか。

太刀川 デザインに携わるようになった初めの頃は、実績のない僕にはいい仕事なんてなかったので「ボール球をホームランにするのが専門」みたいな感じでしたね。だけど、次第にホームランボールが来るようになってきて、さらにものすごく速い豪速球も来るようになりました。

 例えば、大企業の社長直轄プロジェクトで、3カ月で新ブランドをつくらなければならないというようなものです。スピードを求められるし、責任は重いし、しかも成功報酬だからもし上手く行けば利益も大きい。つまり出来上がったときの社会への威力が大きいわけですよね。こうした「何かすごいのが来ているけど」みたいなものが段々増え始めています。その先にあるのは、やはり経営なんです。経営にどんどん近づいていっています。

前野 プロジェクトがどんどん巨大化しているんですね。

太刀川 大規模化、巨大化というのもありますが、それだけではなくて、企業が事業のコンセプトを考えたり、そのアウトプットをかなり精密なところまで一緒に作っていく人がほしいと変化していっているからだと思います。ディープに何社かの企業の内部に入って、「企業や組織と社会を真剣に変えていきます」という感じのプロジェクトを手掛けられたら面白いでしょうね。でも、自分たち自身の先を考えることって、あまりしないんですよ。

前野 そうなんですか。

太刀川 僕が来年何をやっているかすら、正直なところ分からないですから。

前野 でも流れからいくと、取り組むことのサイズはどんどん大きくなっていきますよね。

太刀川 そうですね。でも、どうなんでしょうね。デザイン業界でもAIがどんどん進化していったら、作業を担うデザイナーはあまりいらなくなるかもしれませんよ。でも、自分で言うのもなんですが、そういう変化が大きい状態の方が僕は強いんですよ。もともと雑草系なので。変化が起こっているときの方が割とその波を楽しめるタイプなので、「面白そうだな、荒れてくれる方がいいな」と思うでしょうね。

前野 そうかもね。太刀川さんは巨大な企業の社長ではなく、やっぱりいつまでも雑草でいたいと思っていそうだし、いくら巨大になっても雑草的な仕事の仕方をしたがりそうですよね。

太刀川 その通りだと思います。だから、新規事業の立ち上げばかりやっていたいという感じになっちゃうかもしれませんね。

前野 そういう感じしますね。

太刀川 米アップル社だって、デザイナーは20人くらいしかいないと聞きます。デザイン事務所だって、中心となってやっていく人数って決まっていますよね。例えば、ノーマン・フォスターさんが経営する世界最大級のアトリエ系建築設計事務所には、600〜800人ほどが在籍しているようですが、プリンシパルアーキテクトは6人くらいだそうです。そんなもんなんじゃないですかね。

デザインの可能性を広げたい

前野 僕は幸福学というか、「世界が幸せになってほしい」という理想みたいなものがあって、「それに向って進むんだ」と決めてからラクになったんですけど、そういうのはありますか?

太刀川 あります。僕はデザイン起点のプロジェクトしかやらないし、デザイナーなので、基本的にはデザインの可能性を広げたいんです。デザインの可能性を拡張する人として、デザインが入っていないところにどんどんデザインを差し込んでいくのが僕の役割だと思っています。

前野 なるほど。

太刀川  SDGs(Sustinable Development Goals=持続可能な開発目標)みたいな、成長目標や社会課題などに興味があるのは、そのほとんどにデザインが足りないからなんです。しかもこれらは成長産業になることは目に見えているし、しかもそれをやること自体が人類史にとってとても意味があることなので、「だったらやるしかないだろう。そういう社会に良いものを何か作りたい」というのはあります。結果的には、割と利己的な人間でもあるので、やはりデザインに帰ってこないと僕は嫌なんですよね。

前野 ある分野においてケーススタディーを作るということ?

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