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HOME新産業異業種連携イノベーションの幸福学 > テクノロジーを忘れるために、テクノロジーが必要になる

イノベーションの幸福学

テクノロジーを忘れるために、テクノロジーが必要になる

前野教授、太刀川瑛弼さんと「天才力」について語り合う(その2)

  • 構成=市川 智子
  • 2017/08/23 05:00
  • 1/4ページ
慶應義塾大学大学院の前野隆司教授と、デザインファーム「NOSIGNER(ノザイナー)」で代表を務める太刀川瑛弼さんによる対談の第2回。建築を勉強しながらグラフィックデザイナー、プロダクトデザイナーを目指して独学を進めた太刀川さんの興味はアイデアを発想するプロセスに移っていく。「いいアイデアを生み出すためのルールがあるはずだ」と天才でなくてもできるアイデア創出法を研究する中で、直接的なコンセプトの重要さに気づく。テクノロジーとのかかわり合いと、常識を超えるコンセプトメイクの方法とは。
前野教授(左)と太刀川さん(写真:加藤 康)

「版権フリー」って、どういうことですか?

前野 太刀川さんが創り出す強くて格好いいコンセプトは、僕からみるとやっぱり天才だから生まれるんだと思います。だって天才じゃないとそんなコンセプト、考えられないでしょう? 例えば「Mozilla」のやつとか。

太刀川 んー、そんなことないですよ。1つのコツは、当然過ぎて誰もやらないような、率直なコンセプトを見つける、ってことでしょうかね。

あ、Mozillaのやつっていうのは、2013年に、Webブラウザの「Firefox」を開発しているMozilla Japan(現・WebDINO Japan)のオフィス内にあるスペース「Mozilla Factory Space」をNOSIGNERが設計したんです。その際に、単なる空間設計ではなく、オフィスデザインとしては非常に珍しい版権フリー(オープンソース)を取り入れました。

前野 「版権フリー」って、どういうことですか?

太刀川 簡単に言えば、「図面を公開するので誰でも真似しちゃってくださいね」という考え方です。Firefoxはオープンソースですよね。僕らがオフィスの設計をするとき、「なぜ世界最大級のオープンソースコミュニティーであるにもかかわらず、オフィスをオープンソースにしないのか」と考えました。そこでオフィスを構成しているフロアや棚、照明、テーブルといったものの図面を全てオープンソースにして、誰でも自由に同じものを作れるように仕様をオープンにしたんです。

「Mozilla Factory Space」の内部。オープンソースの理念に基づき、一般に流通している製品を用いてオフィス内を構成している。透過性のあるポリカーボネイトパネルで目的に応じて空間を仕切ったり、単一のコーナーモジュールで棚やランプシェードを組み立てたりすることができる。OAフロアは物流パレットで構成し、内部に通したケーブル類を点検口から取り出して使用できる。空間構成のアイデアについては、全ての図面・制作手順を公開している(写真:NOSIGNER)
[画像のクリックで拡大表示]

 そうしたらシリコンバレーに仕様をコピーしたオフィスができたり、フランスの家具ブランドが図面を基に制作したテーブルやイスを売っていたり、山口情報芸術センター(YCAM)のワークショップルームでテーブルを使っていたりと、オフィスの仕様がオープンソースとして世界に広がっていきました。これは、単に「家具の図面を公開しましょう」という取り組みで何もテクノロジーはないわけですが、インテリアデザインとしてみると極めて珍しくて、極めてインパクトのあるオープンソースのインテリアの事例として注目されたんです。

前野 ちょっと待った(笑)。「オープンソースの会社だから、オフィスもオープンソースにしよう」っていうコンセプトを発想することは、強くてかっこよくて天才的だなって思うんだけど。

太刀川 それを思いつくプロセスがあるんです。

前野 それを聞きたいですね。

太刀川 まず、コンセプトは単純で、直接的な方がいいんですね。先程言った「率直さ」ですね。具体的には、20〜30文字で新しさと強度を説明できるアイデアを考えてみる。そうすると、回りくどい案は出せないんです。

 例えば、「Mozillaはオープンソース」→「オープンソースだからDIY」→「DIYといえばホームセンター」→「ホームセンターには工具」→「工具といえばドリル」→「ドリルは螺旋」→「だから螺旋のオフィスにしました」と連想ゲームのように考えたことを話しても、説明を聞いている人はチンプンカンプンでしょう?

 でも、「オープンソースな人が集まる会社を、オープンソースなオフィスにしましょう」というのは直接的じゃないですか。ここで大切なことは連想ゲームを長引かせないことなんです。僕はダイレクトにつなげられるかにすごくこだわりをもっています。それがないと理解のスピードが落ちてしまうからです。

前野 回りくどいのはよくないということですね。

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