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HOME新産業異業種連携イノベーションの幸福学 > 分身ロボットの誕生、大学を飛び出して“研究室”設立

イノベーションの幸福学

分身ロボットの誕生、大学を飛び出して“研究室”設立

前野教授、吉藤健太朗さんとコミュニケーションの本質について語り合う(その2)

  • 構成=市川 智子
  • 2017/03/31 05:00
  • 1/3ページ
慶應義塾大学大学院の前野隆司教授と、オリィ研究所・代表取締役所長の吉藤健太朗さんによる対談の第2回。不登校時代に自身が感じた孤独感や無力感。高校時代の車いす開発を通じて、その社会的課題の解決に命をかける決意で早稲田大学に進学した吉藤さん。まずは、苦手なコミュニケーションについて知ることから行動を始めた。そこで得た「コミュニケーション」のカギとは? 大学在学中にも次々と賞を獲得した吉藤さんは、ついに分身ロボット「OriHime」開発のスタートラインに立つ。
吉藤さん(左)と、前野教授(右)(写真:加藤 康)
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会話はキャッチボールだということが分かってきた

前野 早稲田大学への入学で、上京して、いよいよ吉藤さんのOriHimeにつながる研究が始まるんですね。

*1 吉藤さんが早稲田大学に入るまでの話は「ロボットと不登校――イノベーターを変えた出会い」を参照

吉藤 東京の空気の悪さに体調を崩したりしながら、人とのコミュニケーションの中に癒やしがあると思っている人間が人と話せないのはまずかろうと、大学1、2年生の間は「人と話せるようになろう」というテーマで過ごしました。例えば、初めから英語を話せる英語圏の人はむしろ英語を上手に人に教えられないと思うんですが、後から英語を学んだ我々は英語の学び方とかノウハウを持っているから教えられますよね。

 だから同じように、人とうまく話しができない私だからこそ、人と話すために身につけたノウハウは初めから人と話せる人よりも使える知識になると考えました。それを駆使した役立つツールを作ることができれば、コミュニケーション障害を抱える多くの人が助かるのではという気持ちもあって、必死に人と話せる技術を身につける練習をしていました。

前野 例えば?

吉藤 まず社交ダンス部に入りました。社交性や協調性、情熱、友情といった言葉は分かりますが、その概念は理解できていなかったので、「社交性ってどこに行けば買えるの?」くらいでウロウロしていたら、「社交ダンス」と書いてある看板が目に入ってきたんですよ。

前野 「お、あるじゃん」って!?

吉藤 そうなんです。見学に行ったらおもしろそうだし、「アメリカで見たやつだ!」と思いまして、女子大生と一緒にルンバやジルバ、タンゴなどを踊りました。仲間と朝まで酒を飲んだり、合宿では早稲田ですから円陣を組んで「都の西北」を大合唱したり。「これ、何がおもしろいんだろう」と思いながらも、「理解しなきゃいけないから」ということでやっていましたが、半年くらいして「これは私が考えている社交とは違う」と気がついて辞めました。あとはヒッチハイクもしましたね。

前野 すごいですね。やると決めたら普通のワイルドな人と同じようなことをしていますよ。

吉藤 「とことんやらなきゃ」という気持ちはありました。東京から奈良県までヒッチハイクをした時はシルバーウィークだったので渋滞していて、9時間ほどクルマに乗りました。最初に乗せてくれたトラックの運転手さんがえらい怖くて、もう、全然しゃべってくれないんですよ。私もしゃべることがなくてうっかり寝てしまったら、「俺が運転しているのに寝るとは何事だ」と叱られました。

 次に乗せてくれた運転手さんには、ぎこちないながらもとにかくたくさん話しかけたんです。だけど、今度は「黙れ」と言われました。黙っていてもダメ、しゃべってもダメ、「どうすればいいんだ」と感じながら、そのうち会話はキャッチボールだということが分かってきたんです。「ならば、実験してみよう」と運転手さんが何か言うたびに「マジですか」「そうなんですか」みたいなオウム返しのようなことをやりだしたら、相手が上機嫌になってきて、逆に質問をしてきてくれるようになりました。質問に答えたら、さらに上機嫌で返してくれるんです。

前野 それはうれしいですね。

吉藤 ぶっちゃけた話をすると、この何の生産性もない無駄な会話のキャッチボールという中に、人間はうれしさを感じるものなんだと理解して、「雑談の面白さとはこれか!」と初めて気が付いたんです。

前野 実は会話ってそうなんですよね。小さいころから慣れていると気付きませんが。

吉藤 コミュニケーションについて少しずつ分かってくると、無視されるとつらかったことや、人工知能(AI)がうまくいかなかったのはリアクションがおかしいからだということが理解できました。さらに、リアクションで重要なことは「いかに正しいリアクションを返すか」ではなく、「間違ったリアクションを返さないか」ということで、違和感を感じさせてしまうことがコミュニケーションを阻害すると考えるならば、人工知能の開発をしている時に「何となくこれは違う」と思った理由はそこだと感じたんです。

前野 1つの正解があるわけでなはく、正解には幅があるということですか。

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