井上 やっぱり、特定の分野に長年関わってきた人や会社は、食い付きが違います。むしろ僕らの方がピンと来ていないぐらいでして、各分野で試行錯誤してきた人にとっては、このデータが分かるとどれだけ面白いかということが分かるわけです。眼鏡メーカーの人間がそこに付いていくのは、なかなか難しいですね(笑)。

「JINS MEME ES」
3点式眼電位センサーを備える「JINS MEME ES」(出所:ジンズ)
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野々上 眼鏡と人事は相当遠いでしょうね。

井上 普通は考えないですよね。

野々上 そこに至るのがすごいです。

井上 社長には「何でも自分で悩みすぎるな」とよく言われています。HRに限りませんが、どの分野でも20年、30年と悩んでいる人かいるから、その人にすぐに聞きに行きなさいと。自分だけで考えていると、自分の仮説にとらわれてしまうから、話を聞いた上で、自分に何ができるかを考えなさいというわけです。

 だから、知の探索といいますか、他者とのコミュニケーションを通じて何かを生み出すということに関して、僕らは本当にてらいがありません。それは、自社でエンジニアを抱えていないからというのもありますし、自社工場がないから稼働率などを気にしなくていいというのもあります。それにしてもてらいがなさすぎて、最終的に自社に何が残るんだろうと思うこともありますが、クイックに動けるところが強みなんでしょう。

眼鏡にはすり合わせが求められる

野々上 ものづくりの話をすると、僕みたいにデバイスを作っている側からは、この眼鏡によくセンサーや回路を入れ込んだなと思いますね。

井上 眼鏡というのは、まだまだすり合わせが求められる部分があって、中国にはなかなか持っていけないですね。回路の処理なんかは、折り畳み式の携帯電話機よりも厳しいと聞きました。

野々上 このヒンジを通すところなんて大変でしょうね。

井上 大変だと言っていました。量産を頼んだ協業先とも、仕様が全くない段階から無理を言って付き合っていただいて。