パワード義足の6つのタスクとは

 6つのタスクは、以下の通りだ。

1. ソファー(Sofa、101点)
ソファの寸法の詳細(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
ソファの寸法の詳細(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
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 ソファーに座って、両足を1度地面から離し、その後に立ち上がり、前方に1.2m進んだ後に、元の位置に戻る。この動きを5回繰り返すことが課せられている。

 ソファーの立ち座りは膝を自分で動かせる健常者なら簡単であるが、片足が従来の義足だと体重を上に押し上げることができないため、ほぼ片足で立ち上がり動作を行えるようにする必要がある。そのため、いかに義足がもう片足の負担を減らすことができるかが問われる。
2. ハードル(Hurdles、102点)
ハードルの競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
ハードルの競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
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 ハードルのバーをまたぐ、あるいはバーの間をくぐるなど、バーに触れずに前方に進むタスクだ。

 従来の受動的な義足では、地面に義足がついている状態で膝が曲がってしまうと、いわゆる「膝カックン」をされたときのように膝が折れ曲がり、転んでしまう。この現象を「膝折れ」というが、このタスクではいかに膝折れにならない状態で屈んだり、またいだりすることができるかが問われている。
3. ランプ&ドア(Ramp & Door、104点)
ランプ&ドアの競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
ランプ&ドアの競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
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 坂道を登り、ドアを開け、通った後にドアを閉め、坂道を下るタスクだ。

 登り坂は膝を大きく曲げないと登っていけないし、くだり坂は膝折れしやすい運動だ。また、ドアを引っ張るときに、少し後ろ歩きをする必要があるため、従来の義足では多少困難が伴う運動である。
4. ステッピング・ストーン(Stepping Stones、108点)
ステッピング・ストーンの競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
ステッピング・ストーンの競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
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 このタスクでは、所定の位置に固定されているかまぼこ状の足場をたどりながらゴールに向かう。

 義足は大股であるくと膝折れの危険が増す。また足場の形状が丸いために、踏み込む位置を間違うと簡単に膝折れが起こる。Xiborgチームはパイロットの身長が高くないため、このタスクが1番の難関であった。
5. タイルド・パス(Tilted Path、115点)
タイルド・パスの競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
タイルド・パスの競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
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 左右に傾斜のある道を真っ直ぐに進まなければならないタスクだ。

 歩行中に足を地面から離して前に持ってくる際には、通常、つま先が地面からすれすれの位置を通って前に振り出すことになる。この地面とつま先の間の距離をクリアランスというが、横に傾斜があるときには、このクリアラスをコントロールしなければならない。従来の義足であれば、つまづく危険を伴うタスクだ。
6. 階段(Stairs、130点)
階段の競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
階段の競技場概要(出典:サイバスロンの競技ルール資料より)
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 最後の難関がこの階段だ。1度階段を登り、少し歩いた後に下る。そこで、テーブルの上にある3個のりんごを皿の上に載せて持ち、もう片方の手でコーヒーカップの載った皿(ソーサー)を持ちながら、元の道をたどって1度戻る。つまり両手に物を持った状態で階段を登り、そして下らなければならない。降った後にテーブルの上にりんごとコーヒーカップを置き、また階段昇降を行ってゴールに向かうのだ。

 通常、大腿義足のユーザーは両足交互に階段を登ることはない。健足で1段登り、義足を同じ段の位置に引き上げる形で1段ずつ登るのが一般的な方法だ。このタスクでは階段のステップを両足交互で1段ずつに登らなければならないので、義足側で体重を引き上げることが求められている。非常に難しいタスクだ。

 このように一つひとつのタスクに、従来の義足では困難であった要素が含まれており、非常に考えられたコースとなっている。競技部門の名前はパワード義足となっているが、実は義足は従来のような受動的なものでも能動的なものでも参加ができる。義足のできない部分を身体能力で補うことも可能なのだ。