携帯電話の基地局と基地局の間の通信には、非常に高いデータ伝送速度が求められる。このため光ファイバー通信を適用するのが一般的だ。しかし、すべての場所に光ファイバーケーブルを敷設できるわけではない。河川や湖沼、山間部などでは、敷設が難しい。こうしたケースに対応するために、光ファイバー通信に代わる高速な無線通信技術の開発が進んでいる。

目標は100Gビット/秒

 東京工業大学 工学院 電気電子系 准教授の岡田健一氏は、ミリ波帯(30G~300GHz)を使うことで、データ伝送速度が光ファイバー通信と同程度の無線通信技術の開発に挑戦している。目標として掲げるデータ伝送速度は100Gビット/秒だ。

 ミリ波を使うメリットは2つある。1つは、未使用の周波数帯域が比較的広く存在すること。このため、高速化には欠かせない広い周波数帯域を利用できる。もう1つは、現状のCMOSプロセス技術を使ってRFトランシーバーICを製造できることだ。高速な無線通信システムを比較的低いコストで実現できる可能性が高い。

 しかし、ミリ波帯域を使って100Gビット/秒と高速な無線通信を実現することは極めて難しい。ISSCCなどの国際学会において、これまで報告された最大伝送速度は42Gビット/秒にとどまっている。少なくとも、これを約2.5倍に高めなければ100Gビット/秒には達しない。