無線通信回路にとって、周波数精度が高く、位相雑音/ジッターの低いクロック信号源は必要不可欠な存在である。これがなければ、高い伝送速度は得られず、接続信頼性の向上も実現できない。これまで、この重責を果たせるクロック信号源は水晶発振器しかなかった。このため現在ではほとんどの無線通信回路に、水晶発振器が使われている。

 もっとも水晶発振器とて万能ではない。欠点は存在する。例えば、寸法が大きいこと、コストが高いこと、半導体チップに集積できないことが挙げられる。以前から、こうした欠点は認識されていたものの、一刻を争う対応が必要だとは考えられていなかった。

 しかし最近になって、状況が変化してきた。キッカケは、「IoTの時代」の到来だ。IoTでは、センサーや無線通信回路、電池を搭載したモジュールをさまざまな場所に配置し、取得したデータをクラウド環境に無線伝送する。広く普及させるには、このモジュールの低コスト化と小型化が欠かせない。従って、クロック信号源の改善を急ぐ必要がある。