シリーズ「思考回路」も第2ステージに突入しました。今回のシリーズ「思考回路II」では、主に開発の進め方といいますか、イノベーションをもたらす原動力とはどのようなことか、という視点でつづりたいと思います。

 その第1回のテーマは 「真のオープンイノベーション」です。

今のオープンイノベーション、何かスッキリしない

 オープンイノベーション(open innovation)をひも解きますと、新事業・新商品開発に際して、組織の枠組みを超え、広く知識や技術の結集を図り、開発を効率的かつスピーディーに進めることとあります。例として、産学官連携や異業種交流、大企業とベンチャー企業による共同研究などが挙げられています。

 流行語のようになった今のオープンイノベーション。これに異議を唱えるものではありませんが、聞いてスッキリしない、というのが私の本音です。と言うより「で、何がどうなっているの?」と聞きたくなるのです。

 評論家の先生が、オープンイノベーションは革新的な技術開発を促し、画期的な新事業・新商品開発に資するものであると仰いますが、では、何がどのようにしてどうなっているのかという具体的な事例を示してはいないようです。

 理由は簡単で、オープンイノベーションというやり方やその概念はいいのですが、実際には、皆が集まれば何かが起こるといった安易な連携や、何が何でも共同でやればいいといったプロジェクトが多く、現実的に有用な開発テーマが定まらないからではないでしょうか。

 開発テーマが定まらない理由はいくつかありますが、その一つは、本当に優れた(有用で将来性のある)テーマを誰かが持ち込むことがないからです。当たり前ですが、実際に作ればもうかることが分かっていれば、最初から自分でやっているわけでして、わざわざ他社(者)と組む必要はありません。

 他に、例えば素晴らしい開発テーマがあったとして、スタートしてから1社ではできないことが分かれば、自らが信頼できる協力企業を選定し、広く知られないように(その意味ではクローズで)秘密のうちに進めるのが一般的だからです。

 そもそも、開発というのは最初にやることに価値があって、その結果の先行利益が得られるわけですから、最初から皆でやろうということはめったにないのです。