宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大西卓哉宇宙飛行士の国際宇宙ステーションへの出発が来月7月に迫り、また1人、日本人宇宙飛行士が誕生することに日本中から注目が集まっている。日本の宇宙開発は「こうのとり」や「きぼう」に代表されるように、近年目覚しい成長を遂げており、世界からの注目度は年々増している印象だ。こうした日本の宇宙開発を支える上で重要なのが、電子デバイス技術だ。JAXAでは宇宙環境に適合する半導体などの電子デバイスの研究開発が進められており、今後の人工衛星やロケット開発を進めていくための重要な要素技術といえる。JAXAで半導体デバイス開発などを手掛ける新藤浩之氏に、開発時に重視することや今後の注目技術などを聞いた。

――JAXAではどのような半導体デバイスを開発しているのか。

新藤氏 ここ10年の開発実績でいうと、計算機を構成するデバイスであるMPUやSRAM、 ASIC、電源系を支えるDC-DCコンバータやパワーMOSFETなどのデバイスを半導体メーカーの協力も得ながら開発している。私自身、旧NASDA時代も含めて20年、一貫して半導体デバイスの研究開発に従事しているが、JAXAの中では比較的珍しいキャリアを歩ませてもらっていると思っている。

宇宙航空研究開発機構(JAXA) 研究開発部門 第一研究ユニット 研究領域主幹 新藤浩之氏
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 研究開発部門 第一研究ユニット 研究領域主幹 新藤浩之氏

 組織面では2015年に研究開発部門の大幅な組織の見直しが行なわれた。従来の専門技術単位でのグルーピングの枠を越えて大くくり化し、開発成果の最大化・効率化を図ったものだ。具体的には、研究開発部門を4つのユニットに分類して新しい発想やアイデアをより多く生み出せるような体制となっている。私が所属しているのは、主に電気系技術を受け持つ第一研究ユニットだ。

――人工衛星やロケットに搭載される半導体デバイスには、どういった性能や特徴が求められるのか。

新藤氏 やはり最も重視されるべきは宇宙環境にいかに適合するかという、「耐宇宙環境性能」だ。具体的には耐放射線性能や、低温・高温にも耐えられる熱環境性能、さらには振動や衝撃にも強い耐久性などが強く求められてくる。半導体デバイスが放射線環境下にさらされると誤作動や損傷を起こすことが古くから知られており、この対策技術が必要となる。また、長期信頼性も非常に大事で、軌道上で修理や部品交換が行えない人工衛星では、5~10年のミッション期間中故障せず、正常に動作することが求められてくる。