「気になるのはコストだ」。多くの人はそう言います。しかし、本当にコストを気にするだけでビジネスは活性化するのでしょうか。私は逆に、そこが気になります。

 私が若い頃には「相見積もり」という言葉はありませんでした。もちろん「見積もり」はありました。しかし、最初から(良い言葉ではありませんが)しゃあしゃあと、「あちこちから見積もりを取って一番安いところに発注する」と言う相見積もりなんてなかったのです。それも、(下請け的な)協力企業から提案された図面を他の協力企業に見せた上で見積もりを出させ、安ければ提案者を差し置いて発注するという、いわば「提案のパクリ・横流し的コストダウン」といったことは絶対にありませんでした。

 それが今や、相見積もりは当たり前の時代になってしまいました。一体、何が目的で、誰がどのように嬉しいのか、私にはそれがさっぱり分かりません。

 繰り返しますが、本当にコストだけを気にしてビジネスが活性化するのでしょうか。顧客からの執拗なコストダウンに屈して、とにかく安くしようという姿勢の先に、本当に光明が見えるのでしょうか。

 確かに、提供する事業や、商品・サービスに掛かるコストを下げれば、一時的に見掛けの利益にありつくことはできるでしょう。しかし、そこには真の利益も、将来を見据えた真の開発魂もありません。

 かつて、世界をリードした我が国の開発魂はどこに行ってしまったのでしょうか。最初に開発したのは日本勢なのに、コスト競争に明け暮れている間にその隙をつかれ、海外の後続メーカーにそのビジネスを横取りされる――。こんなことを、一体、いつまで続けるというのでしょうか。

 そんな中、ビジネスモデルのパラダイムシフト、それも、コスト優先をやめようという強烈なパラダイムシフトの旋風が、我が国に吹き始めました。物流業界の改革です。