大手半導体メーカーであるルネサス エレクトロニクスに、同社が進める技術者教育を聞く本連載(前編、中編)。後編では、市場の変化に適応する現場力強化に向けたプログラムや今後拡充したい内容などを聞いた。
――学んだことを実際の場で使えるように、技術者教育育成プログラムの中で「市場や顧客ニーズに応える」プログラムを追加したとうかがいました。さらに「現場力プロジェクト」を設けて、市場や顧客の動きに追随する力を高めようということですね。
馬場氏 現場力プロジェクトを始めた背景には、事業部が取り扱う範囲で解決しないソリューションが求められるようになったことにあります。事業戦略的にも事業部を超えて新しいビジネス提案をすることもあれば、それぞれの事業部が持っている複数の人材で新しいチームを組んで新事業を起こすような機会が増えてきました。そうすると必然的に、異なる事業部間でコミュニケーションを取らなくてはなりません。
技術者育成プログラムによる研修は、コアとなる専門領域が違ってくることから事業部ごとにそれぞれ少しずつ“色”が付いてきます。いい色が付いた事業部や技術者など、異なる色同士が交わって事業をうまく進めることが、現場力になるわけです。従って、異なる人たちとチームを組んだり、自分1人の能力ではなくて組織で解決したりする力が事業戦略上、一層求められてきています。
技術情報の共有で新しいアイデアが生まれる
――だからこそ、「現場力プロジェクト」では、現場の人たちが交わって議論できるようにしているのですね。
馬場氏 例えば、ルネサス エレクトロニクスにしかない戦略的かつ最適なコア技術を取り上げ、セミナー形式を取りながら、技術開発の第一線で活躍する現場リーダーを講師とし、受講者である技術者たちに知識と情報を与えつつ、講師と受講者の間でのディスカッションにより新しいアイデアを生み出せるようにしています。
他の例では、特徴ある組織に次から次へとインタビューし、それぞれの組織の活動内容を社内のウェブ上に掲載することで、組織を超えたつながりを促すプロジェクトもあります。さらに、中堅社員を対象に、MOTやMBAを体験するようなディスカッションの場も設けています。同じような年代の中堅社員を集めてチームを組み、自ら課題を設定して挑んでみるといった内容です。