以前、知人や取引先の金型メーカーで3次元CAD活用の相談に乗ることがよくありました。何年か後に再度訪問した際、かつて筆者が作成した書式や手順が、そのまま何も変わらずに残っていることをしばしば発見しました。筆者の書式や手順が完璧だったからと言いたいところですが、もちろんそんなはずはありません。

 改良の余地は常にあったはずですし、また組織やソフトウエアなどの変化に合わせて変わっていくべき部分もあったはずです。日本では、ルールや手順を決めるとき、同時にそれを定期的に見直すこともルールとして決める必要がある、と感じたものです。

 米国企業ではどうでしょうか。全く逆と言っても過言ではないでしょう。つまり、ルールや手順は定めさえすればあとはひたすら守られるものと思ったら大間違い。関係者各自がそのルールを守らざるをえなくなる状況を作らない限り、あらゆる場面で拡大解釈されたり無視されたりしてしまいます。

 例えば、だいたいどこの会社でも、訪問者は受付で会社名や氏名を台帳に記入することになっています。ある程度以上の規模の会社や事業所では、受付に常に誰かがいて訪問者が記帳したかどうか確認していますし、受付にある端末へ訪問者が入力すると、面会相手の内線につながる仕組みになって いることもあります、こういった状況では、当然ながら誰でも記入(あるいは入力)するでしょう。

 しかし小さな企業や事業所の場合、ただ台帳が置いてあるだけ、という事も珍しくありません。そういったケースではほとんど誰も記入しません。あるとき、訪問先(デトロイト)の受付にポンと置いてあった台帳を何となく開いてみたら、日本人らしき名前ばかり並んでいました。てっきり訪問者のほとんどが日本人なのかと思ったらそうではなく、強制されなくても自ら記入するのはほぼ日本人に限られる、ということが分かりました。