製造業に携わる企業と企業をつなぎ、足りないピースを埋めるためのマッチングサービスを運営するリンカーズ(詳しくはこちら)。その専務取締役で米国事業を一手に担う桑島 浩彰氏が、日米間の現状に詳しい識者との対談するシリーズ。前回に引き続き、シリコンバレーのコンサルティングファーム米Blue Field Strategies社のジョン・メツラー社長は、シリコンバレーが日本企業に求めるサービスは「教育」だと指摘する。

ジョン・メツラー(Jon Metzler)氏
ジョン・メツラー(Jon Metzler)氏
米Blue Field Strategies社の創業者兼社長。カリフォルニア大学バークレー 校Haas School of BusinessにてITストラテジーと日本のテーマのクラスをもつ。出版、放送、通信、位置特定技術、デジタル・メディアなどの経験をもち、各領域にて新規事業の立ち上げに携わる。90年代に日本に滞在し朝日新聞出版局やTBS、CBS Newsで勤務。北カリフォルニアのJapan Societyの会長も務める。Linkers アドバイザー。

メツラー氏:結論を出すのが遅いという、皆さんがよく気にする日本企業への指摘に関しては、こちらでは既に常識になっています(笑)。解決するには、駐在員にいかに決定権を与えるかが大切だと思います。

桑島氏:この話もかなり長い間議論されている割には全然解決していませんね。

 今のシリコンバレーのエコシステムで、現実問題としての起業家としてシリコンバレーでプログラミングを学んで、スピンアウトして、一人で独立して、ベンチャーキャピタルからお金をもらって、というのは、ハードルはやっぱり高くて、現実には企業に所属してやるしかない。スタートアップ風のことをやろうとすると、企業ということになってしまうと思います。そういう文脈で企業の駐在員はどうでしょうか。

メツラー氏:駐在オフィスを、なぜ置くのかをちゃんと考えることが大事だと思います。人材育成のためなのか、情報収集のためなのか、何か新しい事業を進めるためのきっかけ作りのためなのか。

 人材育成という観点からは、3~5年ほどシリコンバレーに置いて経験を与えて、そこで得た知見を本社に取り入れるというものです。常にそれをするためにはシリコンバレーで相手を見つけて仕事をしなければならない。これは長期視点で見ると、育成という意味合いも出てきます。受け手がないと失敗もできません。失敗ができなければ失敗によって何かを学ぶ機会もない。

桑島氏:「シリコンバレーは小さな村だ」とジョンさんはよくおっしゃっていますよね。1回目は会ってくれるけど、2回目は何か具体的なものを持ってこないと会ってもらえない。ミーティングをする際は、当たり前ですが、相手にとって利益がないといけない。シリコンバレーに限りませんが、日本企業は表敬訪問や、相手への利益を全く考えずに取りあえず来ましたみたいな、なんだかよくわからないことをすごく沢山やっています。駐在員を置いているのに結局全然情報を取れない。現地にオフィスを持っているのに、日本サイドにリサーチを頼んでくるみたいな。

 スピード&スケールをシリコンバレーは求めているのに、意思決定はすべて、本社にお伺いを立てないとできないとか。結局、良い投資機会、ビジネスを逃す悪循環が生まれて、日本そのものがシリコンバレーにおいて何の存在感もない形になっている。それを指してジョンさんは「It's not healthy(健康的じゃない)」って言っているのですよね。