製造業に携わる企業と企業をつなぎ、足りないピースを埋めるためのマッチングサービスを運営するリンカーズ(詳しくはこちら)。その専務取締役で米国事業を一手に担う桑島 浩彰氏が、日米間の現状に詳しい識者との対談するシリーズ。前回に引き続き、シリコンバレーのコンサルティングファーム米Blue Field Strategies社のジョン・メツラー社長は、シリコンバレーの固定観念を怖し、日本企業がプレゼンスを発揮するには[まず成功事例を見せる」のが大事だと話す。
桑島氏:シリコンバレーにおいて重要なのはスピーディーにスケールさせるということ。一方、日本は質の高いものを作るマニュファクチャリングがうまかった。では、スピーディーに高品質のものをスケールできるのか。ここはどうでしょうか。
メツラー氏:スケールに時間が掛かるとその間に市場環境が変わってしまう可能性があります。スピーディーなスケールに意味があります。それが難しいのもおっしゃる通りです。私は近年、BASIS Science社のスマートウオッチを使っていましたが、これはApple Watchが出る前のスマートウオッチで、1台目のデバイスが出て、2台目までに18カ月ほどたってしまった。その間、Apple社が参入するということで環境が変わってしまった。スピーディーなスケールが、重要なポイントです。
シリコンバレーの最重要は「スピーディーなスケール」
桑島氏:Fitbit社がうまくいったのは、詰まるところデバイスが簡単だったからかなと思います。Fitbitではハードウエアが生きる一方で、GoPro社のようなカメラは簡単ではない。
メツラー氏:簡単ではないですね。ある種のインテグレーション(統合設計)の力も必要です。
桑島氏:GoPro社は、むしろ、設計能力があった。ある意味、Apple社みたいなことをやったということですね。
メツラー氏:インテグレーション力に加えて、何に使うのかのマーケティングも上手だった。「GoPro fail」とYouTubeなどで検索すると、その動画が一杯出てくる。つまりGoProを身に着けながら事故を起こした様子を録画するユーザーが結構いるわけです。それイコールGoProというまでに発展してきたので、マーケティングは非常に細かく行っていました。
桑島氏:日本のサプライヤーがJapan as a serviceでシリコンバレーに入っていく際にもスピーディーなスケールが求められる。ハードルは高いとあらためて感じます。だからこそ何も起きていないということでもあるわけですね。
Made in Japanについての機会のような話が出ていますが、一方で、ソニーやパナソニックなら、Fitbit社みたいに、やろうと思えばできるんですね、ハードウエアもソフトウエアも全部できる。ここでの疑問は2つあって、なぜできていないのか。今さらウォークマンの話をしてもしょうがないのですが、ウォークマンはコンセプトを考えた後、日本でコンポーネントを調達して、組み立てて、輸出した。それを非常にスピーディーにやった。そして、コンセプトとマーケティングが非常によかった。それをまたやればいいと思うのですが、なぜ日本企業はできていないんでしょうか。
つまり、オポチュニティー・フォー・ジャパニーズ(日本人が活躍する機会はないのか)ですね。Made in Japanでもいいんですけど、そもそも活躍できる余地が日本人にあるのかということです。あるとは思うのですが、いろいろな制約があってできていない。文化の話もあればサプライチェーンの話もある。それでも、日本人にオポチュニティーはあるんでしょうか。