前回に続き、今回もコーディネーターとして活躍するひろしま産業振興機構 経営基盤強化支援センター プロジェクトリーダーの鳥越義夫氏に、リンカーズ 執行役員で大阪支店長を務める北中萌恵氏がお話を伺います。大企業が構造改革を進める中、今、地方ではこの共同受注の取り組みが活発化しています。今回は、同機構で進める共同受注プロジェクト「ヤマトプロジェクト」についてです。

前回までの記事はこちら(第1回第2回

リンカーズ 執行役員 大阪支店長の北中萌恵氏(以下撮影:森本勝義)
リンカーズ 執行役員 大阪支店長の北中萌恵氏(以下撮影:森本勝義)
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北中氏:今、共同受注に向けたプロジェクトを始めたところですよね。

鳥越氏:はい、広島県のものづくりを代表する企業さんを結集した集団を作り、複雑化する市場ニーズに応えていこうという企業連携グループ「ヤマトプロジェクト」です。昔、広島県の呉で「戦艦大和」を作っていたことにあやかって名付けました。「戦艦大和」は、軍需産業という特殊性はありましたが、当時の最先端の技術を結集し、粋を極めたものづくりをしていたと思います。

 こうした共同受注のネットワークを作ろうと思ったきっかけは、発注側の企業さんを回ってみて発注形態が以前に比べ変わってきていると実感したことです。以前は元になる仕様書や図面を基本に加工をするレベルでした。今では加工は単加工ではなく複合化し、組立て、サブアセンブリーやモジュールあるいはユニットで製品を納めてほしいという要求も増えています。加えてものづくりのプロセスでは上流から下流まで、つまり設計開発から据え付け試運転まで一貫して外注したい、と。そういった要望の比率がだんだん高くなっているんです。

 それで商談会で、もともとは単加工のメーカーさんであってもネットワークをお持ちの受注企業さんが有利になってくる傾向がみられました。ただ、そういう企業さんでも全てのケースに対応できるとは限らない…そこで、私たちも少し関与して、広島県の製造業のベンチマークになるような集団を作ろうということで発足させたものです。

編集部:設計開発から据え付けまでやって欲しいというニーズは、増えているんでしょうか。

鳥越氏:リンカーズさんの案件も、そういう例があるように思います。背景の1つは、日本のものづくりは今や世界的に見ても品質面では一定のレベルに達していて、複雑な加工でも耐えられる。単純な例ですが、A社さんに機械加工を外注するのだけれど、表面処理も要るから、発注企業さんが1回引き上げて今度は表面処理のためにB社さんに外注するといった場合があります。A社さんが表面処理のネットワークをお持ちなら、機械加工と表面処理を一括で受けてもらうことができ、1回引き上げるという発注企業の手間がなくなるわけです。

 あるいは構想段階の製品を完成品に近い形で収めて欲しいという要求があります。そうすると少なくとも設計から組立てまでができないといけない。これまでは発注企業さんが設計し、図面化して加工を外注し(部品を買って)、発注企業さんが組み立てていました。もし実力のある外注先があれば、設計から組立までやってもらえると発注企業さんは楽になりますよね。そういった機能をネットワークでカバーできないかということです。

編集部:それは受注側にとっても悪い話ではないんですね。

鳥越氏:そうです。一般的には、製造面での工程ゾーンが長くなる程、いろいろ工夫もできてコスト的にも有利になりますから。

北中氏:発注側が調達した材料の加工を依頼する場合と、これを作ってくださいと依頼されて調達先などを選べる場合とは、恐らく、後者の方が受注企業の利益は高くできるんです。調達力があれば、原価に近い低いコストで作れるので、あとは加工費をうまく乗せていけば利益が出やすくなる、ということですよね。確かに、完成品で入れてくださいという案件は増えてきていますね。