日経コミュニケーション2016年3月号pp.54-62の5Gのすべて「富士通による超高密度分散アンテナ、エリクソンによるネットワーク化社会」を分割転載した前編です。

日本の5G(第5世代移動通信システム)を推進する5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)のキーパーソンが、日本を含めた世界の動向を、研究開発や標準化、ユースケース、アプリケーションといった様々な観点から解説する「5Gのすべて」。今回は、富士通の取り組みを紹介する。

 スマートフォンやタブレット端末の急速な普及に伴い、移動通信のトラフィックが急速な増加を続けている。今後も4K、 8Kなどの高精細な動画データをモバイル利用するなどの需要が高まり、大幅なトラフィック増が見込まれる。

 また、あらゆるものがネットワークにつながるIoT(Internet of Things)時代の到来により、人が持つ情報端末だけでなく、家電機器や車、建設機械、街灯、防犯カメラなど、様々なモノに通信機能が搭載されるようになる。

 5Gは、このように増加を続けるトラフィックを効率的に収容するだけでなく、世の中で発生する大量のデータをクラウドで処理する高度なICT社会を構築するために必要な基盤技術となる(図1)。

図1 富士通が考える5Gのビジョン
図1 富士通が考える5Gのビジョン
このようなICT社会を実現するための取り組みの一つとして、5Gに向けた無線通信技術の研究開発を進めている。
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 人々が活動する物理世界で発生する大量のデータは、デジタル世界で収集・解析され、そこで生み出された新しい知見が物理世界へリアルタイムにフィードバックされる。このプロセスが、人々や企業の活動を支援し、ライフスタイルやビジネスに変革をもたらす。富士通はこのようなICT社会を実現するための取り組みの一つとして、5Gに向けた無線通信技術の研究開発を進めている。本稿は、大量のデータを効率的にネットワークで収容するための高速・大容量化技術の研究開発の取り組みについて紹介する。