日経コミュニケーション2016年2月号pp.52-60の5Gのすべて「三菱電機による無線と光の高度化、NECによる仮想化の展開」を分割転載した後編です。前編はこちら

日本の5G(第5世代移動通信システム)を推進する5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)のキーパーソンが、日本を含めた世界の動向を、研究開発や標準化、ユースケース、アプリケーションといった様々な観点から解説する「5Gのすべて」。今回は、NECの取り組みを紹介する。

 近年、高度なICTを活用して様々な社会課題の解決に取り組む「社会ソリューション」が注目されている。社会ソリューションは、(1)実世界のデジタル化(データ収集)、(2)収集したデータの分析・推論、(3)分析・推論の結果に基づく実世界の制御・誘導─というサイクルを回すことで実現される。様々な社会ソリューションを効率良く実現するには、ユーザーのサービス要件に応じた様々なICT機能を共通のプラットフォーム上で提供することが有効である。5GはこうしたICTプラットフォームと融合しながら、社会ソリューションの一翼を担う。

 社会ソリューションを実現する際にネットワークに求められる性能はユースケースにより大きく異なる。例えば、4K/8K動画のストリーミング配信や高精細カメラによる映像監視では高いデータレートや大きなシステム容量が必要になる。一方で、自動運転車や生産ラインにおけるロボット制御では超低遅延や高い信頼性が求められ、様々なセンサーを利用したインフラ監視では膨大な数のIoTデバイスを収容する能力が必要になる。

 そこで、SDN(Software-Defined Networking)やNFV(Network Functions Virtualization)の技術によりネットワーク機能の仮想化とプログラマビリティーの向上を進め、サービス要件に応じた様々なネットワーク機能を共通のICTプラットフォームに統合することが有効である(図5)。これにより、アクセス/トランスポート/コア/アプリケーションなど、ネットワークの各機能の実装と配備の柔軟性が高まり、ユースケースや時々刻々と変わるサービスの状況に応じて機能や計算処理リソースを最適に配備できるようになる。

図5 Network2020/5Gアーキテクチャー
図5 Network2020/5Gアーキテクチャー
サービス要件に応じた様々なネットワーク機能を共通のICTプラットフォームに統合する。
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