日経コミュニケーション2016年1月号pp.28-34の5Gのすべて「KDDIによる高周波数帯の利用法、シャープによる多数端末の収容」を分割転載した後編です。前回はこちら

日本の5G(第5世代移動通信システム)を推進する5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)のキーパーソンが、日本を含めた世界の動向を、研究開発や標準化、ユースケース、アプリケーションといった様々な観点から解説する「5Gのすべて」。今回は、シャープの取り組みを紹介する。

 5Gでは、スマートフォンやタブレット端末だけでなく、家電やセンサーなどのあらゆるモノがインターネットに接続するIoTやM2M通信の実現が見込まれている。IoTやM2Mは、多くの端末のデータ収集を可能とする。収集したビッグデータを活用して今までにないサービスを提供できるという期待がある。

 例えば、複数の家電をネットワークに接続して連携させることで、新たなライフスタイルを実現できるだろう。また、マラソン大会などのイベントで一時的に多数の人が集まる環境では、参加者の心拍や血圧などの少量データをクラウドに送信し、ヘルスケアに役立てることも可能になる。

 このようなユースケースを実現するためには、5Gの要求条件として挙がっている、基地局が多数の端末を同時に収容するネットワークの構築が必要となる。そして端末側が基地局に対して少量のデータ送信をする上りリンクのトラフィックが主体となる可能性が高い。ユースケースや時間・場所によって、送信データのQoS(Quality of Service:サービス品質)やデータサイズ、データ送信する機器数が大きく変化することから、異なるタイプのトラフィックに柔軟に対応していく必要がある。さらに基地局が収容する多くの端末が同時に上りリンクのトラフィックを有する場合、遅延低減を実現することで、効率的に多くの端末が通信できるようにする技術も必要になる。

 本稿はこれらの要求条件に対するシャープの取り組みを紹介する。