日経コミュニケーション2016年8月号pp.54-61の5Gのすべて「実用化に向けた総合実証試験、2017年度実施へ検討体制を整備」を分割転載した後編です。前回はこちら

日本の5G(第5世代移動通信システム)を推進する5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)のキーパーソンが、日本を含めた世界の動向を、研究開発や標準化、ユースケース、アプリケーションといった様々な観点から解説する「5Gのすべて」。今回は、総務省が2016年1~7月にかけて開催した「電波政策2020懇談会」の最終報告からポイントを紹介する。

 現在、電波の利用は、我々の日常生活に不可欠となっている携帯電話や無線LANなどの無線通信ネットワークのほか、ドローンをはじめとするロボット、医療、環境など様々な分野に広がり、あらゆる「モノ」がネットワークにつながるIoT(Internet of Things)社会の本格的な到来が期待されている。その一方で、モバイルブロードバンドの進展に伴う移動通信トラフィックの増加への対応やモバイルを活用した新たなサービスの提供も求められている。

 このような状況に対応するため総務省では、2016年1~7月にかけて「電波政策2020懇談会」を開催し、5G(第5世代移動通信システム)や次世代ITS(高度道路交通システム)といった新たなモバイルサービスの実現に向けた推進方策などを検討した。

 最終報告では、クラウドに集積される様々な種類の大量データの流通に不可欠なIoT時代のICT基盤に5Gを位置付けるとともに、9つの利活用分野と3つのプロジェクト、9つの推進モデルが提示された。今後はプロジェクトの推進などを通じて、2020年の5G実現に向けた取り組みを加速させていく。今回は5G最終報告におけるポイントを紹介する。

 4Gまではスマートフォンやタブレット端末への情報配信を行うことがサービスの中心だった。5Gの特徴は「超高速」のほか、「低遅延」や仮想化技術を用いた多様なサービスに対応可能な「柔軟なネットワーク」がある。これらの特徴により、自動車分野をはじめとする、これまで以上に多様な分野での活用が期待されている。

 5G普及のポイントは、次の9分野へ横展開をどう実現するかにある。

  • (1)スポーツ(フィットネスなど)
  • (2)エンターテインメント(ゲーム、観光など)
  • (3)オフィス/ワークプレイス
  • (4)医療(健康、介護)
  • (5)スマートハウス/ライフ(日用品、通信など)
  • (6)小売り(金融、決済)
  • (7)農林水産業
  • (8)スマートシティ/スマートエリア
  • (9)交通(移動、物流など)