日経コミュニケーション2016年7月号pp.62-68の5Gのすべて「5G時代の新サービス・ビジネス、ユーザー視点で構想」を分割転載した前編です(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)。

「5Gのすべて」は、日本の5G(第5世代移動通信システム)を推進する5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)のキーパーソンが日本を含めた世界の動向を、研究開発や標準化、ユースケース、アプリケーションといった様々な観点から解説する連載コラムである。今回は、5G時代の新サービス・ビジネスを開拓するための取り組みを紹介する。

 5Gシステムが当たり前になる時代、生活・ビジネスシーンにおいて、ユーザーが求めるアプリケーションは何か。様々な分野の産業で5Gを活用することにより、どのような新サービスが生み出されるのだろうか。

 従来のモバイル回線は人間が利用するスマートフォンを主な端末として想定していた。いわば人間と機械のインタフェース、さらに視覚や聴覚などを通じた人間内部とのインタフェースを前提としていた。5G時代にはIoT(Internet of Things)に象徴されるように人間と機械だけでなく、現実世界とのインタフェース、人間が介在しないアプリケーションが無限に広がっていく(図1)。

図1 5Gで期待される新サービス
図1 5Gで期待される新サービス
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 5GMFアプリケーション委員会では、こうした視点を出発点として、従来の携帯ユーザーの潜在的なニーズも汲み上げ、従来型の市場も拡大しながら、現実世界とのインタフェースを前提とした新しいユーザーも迎え入れ、社会課題の解決とあらゆる産業の発展に寄与することを目指して活動を推進している。主なミッションは下記の通りである。

・利用シーンの想定、およびビジョンの策定

・新規アプリケーション、およびビジネススキームの検討/分析

・利用機会増大に向けての検討

・制度的課題への提言

 ユーザーに5Gのメリットを分かりやすく訴求し、潜在的ニーズを捉えて5Gの技術開発へフィードバックすることにより、今までにない利用法・ユーザーを開拓する。先端技術の普及を目指すフォーラム団体では技術シーズ側からの発想に陥りやすいが、5GMFアプリケーション委員会においては、「ユーザーの視点で考え、発想する」スタンスとし、システム/世代にとらわれず、ニーズ側としての要求を制限なく発信していく姿勢を貫く。個人・ビジネスを問わず、ユーザーの夢/構想を基軸に据えるとともに、それを阻害する要因や解決すべき課題を明確にしたうえで、ユーザー起点のビジョンを策定していく考えである(図2)。

図2 アプリケーション委員会の主な活動内容
図2 アプリケーション委員会の主な活動内容
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