聞き手の影響力
本来、話し手は聞いてもらいたいという欲求を持っています。でも、聞き手に聞こうとする態度がないと、話し手はその聞き手と積極的にコミュニケーションを取ろうと思わなくなります。また話し手は、聞き手の態度がとても気になるものです。聞き手が時計を見るだけで、「急いでいるのだろうか」「次の予定がありのだろうか」と考えてしまいます。
このように聞き手の態度は話し手に強い影響力を持っています。話し手の話す意欲は、聞き手の態度によって大きく変わるのです。
傾聴のための5つのスキル
相手に積極的に関心を持って注意深く話を聞くことを「傾聴」といいます。傾聴スキルをうまく使うことができれば、相手からより多くの情報を得ることができます。
[1]うなずき・あいづち
相手に視線を合わせ、話の内容に応じて、首を縦に振ってうなずいたり、「なるほど」「そうなんだ」「へえー」などと、あいづちを打ったりすることで、相手に「話をちゃんと聞いている」ことが伝わります。相手は自分のしゃべっていることが理解されていると感じて、安心感を持つことができます。
[2]うながし
話が一区切りしたとき、次の話をうながすことで、相手はその先を話そうという気になります。うながしは、あいづちと合わせて使うことが多くなります。例えば、「それはいいね(あいづち)。それから?(うながし)」といった具合です。質問することで話を先に進めさせながら、相手の情報をさらに引き出すこともできます。
[3]ペーシング
相手の視線や姿勢、声のトーン、気持ちなどを相手に合わせることです。聞き手がしっかり話を聞いていると思っていても、話し手とのペースが合っていないと話し手は話を聞いてもらえているとは感じられません。例えば、ものすごく楽しかったことを話している相手に対して、「そうだね」と冷静に答えられても、聞いてもらえているとは思えないでしょう。ペースを合わせることにより、相手は受け止められていると思うことができます。
[4]繰り返し(オウム返し)
相手の言った言葉をそのまま繰り返すことです。相手が言ったことを繰り返すことで、話をきちんと聞いていることが相手に伝わります。例えば、次のような場合です。
スタッフ(話し手):「先方の担当者は、事前に何も言っていませんでした」
上司(聞き手):「そうか、何も言っていなかったんだね」
[5]言い換え(パラフレーズ)
相手の話を別の言葉に言い換えたり、要約して確認したりすることです。話の内容を確認することで、相手と自分の認識のズレを修正します。相手は、話したことが理解されているという安心感を得ることができます。 例えば次のような表現です。
「言い換えれば、~ということにもなるのだろうね」
「なるほど、つまり~ということだね」
話をよく聞くことにより、聞き手は相手をより理解することができます。相手をしっかり理解できることによって、相手との信頼関係が構築されるとともに、適切なアドバイスや指導ができます。また、話し手も相手が自分の話を聞いてくれている、理解してくれているという実感を持つことができます。そして、より多く話したくなります。
相手からより多くの情報を引き出したければ、「ただ聞けばよい」のではなく、意図的かつ、戦略的に聞き方を変えていく必要があります。「聞く」ことは、反復練習することで身に付くスキルです。ぜひ継続して使ってみてください。