伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役、サイバー大学客員講師
伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役、サイバー大学客員講師
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 「第4次産業革命で消える職業」というテーマを多くのメディアが今、こぞって取り上げています。個人的に、悲観的な話はあまり好きではありません。なので、希望の持てる話をしましょう。消える職業とは逆に、第4次産業革命の時代に最も需要が増える職業は何だと思いますか? 私はこの質問に、迷いなく「データサイエンティスト」と答えます。正確に言えば、データサイエンティストはあらゆる業界で既に不足しています。

強化学習とは

 データ分析といえば、財務諸表やユーザー数の推移などのデータ分析を思い描く人が多いかもしれません。しかし、これからのデータサイエンスは、もっと広い範囲のデータ分析を求められます。

 例えば、インターネット上にはデータ分析の練習用にさまざまなオープンデータが公開されています。その一例を挙げてみます。

・1年後に糖尿病になる確率と体脂肪率、血糖値などに関するデータ
・ボストン地域における住宅価格と犯罪率、教師の比率などのデータ
・ワインの等級とリンゴ酸、マグネシウムなどとの関係に関するデータ

 このように、医療から自治、農業、製造業までさまざまな分野でデータ分析が役立つのです。実際に、データから病気の原因を分析したり、品質の高い果物を確実に栽培したりすることなどは既に実施されています。もちろん、これらの分析は研究レベルでは古くから実施されていたことです。

 では、なぜ今再びデータサイエンスが注目されているのでしょうか。理由は2つあります。その1つは、ソーシャルメディアとIoT(Internet of Things)が進化したからです。これらの進化により、一般の企業でもさまざまなデータを収集して分析することが簡単にできるようになりました。こうして、分析した結果をビジネスに生かすことができるようになったのです。

 数年前までは、企業には財務諸表やWebアクセス数のようなデータしかありませんでした。それが、ソーシャルメディアとIoTの進化でいろいろなデータを集めることができるようになったのです。調理に例えるなら、おいしものを作るためには「食材」が必要です。ここで、1種類の食材だけではなく、肉や魚、野菜など非常にバラエティーに富んだ食材がそろうようになったのです。今後はこれらの食材を組み合わせて「調理」する調理師が必要になります。その調理師が「データサイエンティスト」というわけです。

 こうした背景から、これまでとは違って経営分析のみならず、全ての事業や業務においてデータサイエンスが必要な時代になりました。