ビジネスの変化とデータ分析

 もう1つの理由は、ビジネススピードが進化したからです。技術革新が起きる時代にはビジネスルールが激しく進化するため、戦略をリアルタイムに変更していかなければなりません。そのためには、スモールスタートで試行錯誤を繰り返し、さまざまなイノベーションを起こす必要があります。しかし、闇雲に何でも試すわけにはいきません。

 ここに、データサイエンスが役立ちます。スタートアップで高い支持を受けているリーン思考の考え方では、企画段階におけるマーケティング分析より、スモールスタートで事業を実施して、その効果や効率、改善策をデータ分析に基づいて実施することを推奨しています。

 つまり、これからのビジネスでは、走りながらデータ分析をリアルタイムで行い、さまざまな戦略を軌道修正していく方法が必須なのです。そのためには、データサイエンティストはビジネス上必須になると言えます。

人工知能とデータサイエンス

 意外と知られていないことですが、人工知能において学習部分を担っている中心的役割の「機械学習」というアルゴリズムは、多くの場合、統計学に基づいた考え方が基になっています。

 従って、人工知能を使ったデータ分析を行う場合は、機械学習のアルゴリズムを選択し、その精度を良くするためにさまざまなパラメーターを調整しなければなりません。そうしたことから、人工知能を使う上で統計学の知識が必要になります。

 加えて、実際にさまざまなビジネスに関わってみると、人工知能を使うまでもなく、統計学に基づくデータ分析で十分な分析結果が出ることが多くあります。誤解のないように言っておくと、人工知能は新しい可能性を引き出す非常に優秀な技術で、企業にとっての強い武器となります。しかし一方で、人工知能を実際に生かすには、時間と投資が必要になります。

 これからは、単純な統計分析と人工知能をシチュエーションに応じて使い分けることが大切です。どちらにせよ、戦略立案と事業の実施、どちらにおいても優秀なデータサイエンティストが必須であり、その人材が企業の命運を握ることになるでしょう。つまり、これからの経営者や事業責任者にはデータサイエンスは必須知識となるのです。

 また、人工知能の進化などにより、あらゆる事務は自動化されます。そのため、マネージメントの仕事は、心理的な面でのサポートやデータ分析に集約されると私は予測しています。つまり、「経営者=データサイエンティスト」の時代が来たと言っても過言ではないのです。