伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サートプロ IoT技術講師、IoT検定制度委員会メンバー
伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サートプロ IoT技術講師、IoT検定制度委員会メンバー
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 私が製造業の企業や団体からIoT(Internet of Things)の技術を使った「ものづくり」の相談を受けていると、多くの場合、ある課題を突きつけられます。その課題とは、日本の企業は現在の仕事で手いっぱいであり、「新しいことを始める余裕がない」というものです。

 それは、製造業と呼ばれる企業が「IoT=製造ラインの効率化」という一面でしかIoTを見ていないことに原因があると思います。私は、IoTは生産効率化にももちろん役に立ちますが、スマート製品(インターネットにつながる製品)の新開発という「ものづくり」事業の方が大きな市場になると考えています。

そもそも「製造業」というくくりの間違い

 「製造業」とは、「もの」を作る企業が属する業界のことを言います。最もイメージしやすいのは、液晶パネルやねじなどの部品を生産ラインで大量生産する工場でしょう。では、最近多い最終製品(部品などではなく消費者に届ける最終的な形の商品)を販売するファブレス企業はどうなのでしょうか?

 例えば、ドローンを作る会社の多くは設計を自分たちで行います。しかし、生産は小ロットのため、制御装置やモーター、プロペラなどの構成部品を仕入れるか、加工品であればインターネットを使ってサイズなどを指定した上で発注します。そして組み立てだけを自分たちで行います。

 このように、「もの」を作ることに対して、役割が明確に分散する傾向があります。そのため、生産ラインで大量生産を行う企業と、最終製品を作る企業とでは今後採るべき戦略は大きく変わります。にもかかわらず、あらゆる企業を「製造業」や「メーカー」という言葉でひとくくりに捉えてしまうと混乱し、戦略を見誤る可能性が高いので注意が必要です。

 そこで、生産ラインを使って大量に部品を作る企業を「部品製造業」、最終製品を作り出すファブレス企業を「ものづくり業」と分けて今後の戦略を考えてみたいと思います。前後しますが、まずはものづくり業について、続いて部品製造業について話を展開していきます。