伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サートプロ IoT技術講師、IoT検定制度委員会メンバー
伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サートプロ IoT技術講師、IoT検定制度委員会メンバー
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 このコラムの第1回に引き続き、今回も企業がどのように人工知能と付き合えばいいのかについてお話ししたいと思います。

今が企業にとって運命の分かれ目

 時代は第4次産業革命に入ろうとしています。なぜかといえば、IoT(Internet of Things)の技術が確立したことによって大量の分析データが手に入り、それを必要としていた人工知能が研究段階から実用化段階へと進むためです。

 工場での部品の需要予測や、農作物に対する品質の自動管理と選別の自動化、自動運転車など、人工知能の実用化によって生み出される新しい価値は無数であり、その結果大きな社会変化をもたらします。そのため、世界のビジネスルールは大きく変化し、急成長する企業と、急速に衰退する企業に分かれることでしょう。

 1つ言えることは、リスクを嫌って新しいビジネスにチャレンジできない企業は、衰退する側の企業に入る可能性が非常に高いということです。そこで、日本政府も「日本再興戦略2016―第4次産業革命に向けて―」(参考)における重点技術として「IoT・ビッグデータ・人工知能」を指定し、どの企業もこれらの技術を生かして新しいビジネスの企画を立てようと計画している段階です。中でも人工知能に大きな可能性を感じている企業は非常に多くあります。

企画が進まない理由

 しかしながら、残念なことに実際に企画を終えてプロジェクトを開始している企業は一部に過ぎず、「検討段階」である企業が多いというのが現実です。これはグローバル競争の観点から見ると「非常に遅い」と言わざるを得ません。

 私はコンサルティングや講演などを通じてさまざまな企業の企画責任者の方と話し、肌で感じた結果、その理由は「人工知能というものを正しく理解できていないことにある」と感じました。

 講義などを行っていると、「人工知能に何ができるのか理解できないため、新しいアイデアが浮かばない」という相談をよく受けます。それに対し、私は「できるか、できないかはいったん置いておいて、まずは会社として何をすべきかという観点からアイデアを出してください」と答えます。

 人工知能ができることを自分たちのビジネスに当てはめようというプロセスで企画を立てようとするのは、非常に難しいと思います。人工知能は目的ではなく手段だからです。