伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役 兼 コーデセブン CTO、サートプロ IoT技術講師、IoT検定制度委員会メンバー
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 先日、ソフトバンクグループが英ARM Holdings(ARM)社を買収すると発表しました。その狙いについて、日経テクノロジーオンラインに私の(インタビュー記事)が掲載されました。ありがたいことに、非常に多くの反響をいただきました。そこで本コラムにおいて、もう少しこの買収に関して技術的な視点から私の見解を述べさせていただきたいと思います。

そもそもARM社はどれほどすごい会社なのか?

 ARM社は組み込み向けCPUで高いシェアを有している。その理由は、ARM社が開発した「ARMアーキテクチャ」によって電子機器を省電力で動かせるから──。このことについては、多くのメディアで語られています。

 しかし、ARM社の価値はそれだけではありません。組み込み分野の技術者に言わせると、「ARM」というキーワードは企業名を指す固有名詞ではなく、「ARM」というCPUの代名詞です。つまり、ARMアーキテクチャが業界内に定着しており、それを理解していてファンである技術者が多いということ。そして、それ故にARMに関する学習教材も充実している。すなわち、ARMアーキテクチャは業界内で絶対的優位にあるのです。

 これが、ARM社が「約束された成長企業」と呼ばれる所以(ゆえん)です。

 つまり、ARM社の技術が素晴らしいのはもちろんですが、それ以上にブランド価値が作り上げた「参入障壁」という、技術者でなければ理解しにくい価値がARM社にはあるということです。

 その上で、ARM社には今、IoT(Internet of Things)という強みが加わっている。すなわち、市場におけるシェアが高く、今後見込まれる市場成長率も高い。プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでいう「花形事業:Star」(「金のなる木」とも表現される)というポジションに、ARM社はあるのです。