伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役、サイバー大学客員講師、サートプロ IoT技術講師、IoT検定制度委員会メンバー
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伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役、サイバー大学客員講師、サートプロ IoT技術講師、IoT検定制度委員会メンバー
 地方自治体の中でも積極的なIoT化の取り組みを見せる石川県加賀市。同市が設けたスマート加賀IoT推進協議会のアドバイザーを私は務めています。その関係で、加賀市内において小学生向けのIoT (Internet of Things)教育を実施しています。実は、小学生に限らず「プログラミングを知らない人にIoTを教えてほしい」という依頼が多く、困っていました。

 実習を行わずに座学だけの授業にするのは簡単です。しかし、IoT、すなわち「もののインターネット」に関する授業で、「もの」を見ずに授業を受けても、その場では分かったような気になるかもしれませんが、実際にはほとんどの人が理解できません。そこで、弊社の最高技術責任者(CTO)に相談したところ、「小学生に教育するなら『Minecraft(マインクラフト)』がいいですよ」と言われました。私とMinecraftの付き合いはここから始まりました。

多くの大人にとって謎のゲーム

 Minecraftはゲームです。マルクス・ペルソン(ペンネームはNotch)というゲームクリエイターが、同人(アマチュア)ゲームとして開発しました。世界中で爆発的な人気となり、現在はスウェーデンMojang社という、彼が創業した会社が開発しています。子供にも大人気のゲームで、パソコンの他、スマートフォンやゲーム機向けにもソフトウエアが販売されています。シリーズの累計販売本数は、なんと1億2200万本を超えています。

 加賀市で私の授業を受ける小学生や高校生に「Minecraftをやったことがありますか?」と質問すると、ほとんどの子供が手を挙げます。実は、私も数年前にMinecraftをスマートフォンのアプリ(アプリケーションソフトウエア)を購入してプレイしてみたのですが、最初の感想は「なんだこれは? 全然面白くないぞ!」というものでした。Minecraftは立方体のブロック(サンドボックス)だけで構成された世界で、プレーヤーは好きなブロックを積み上げて家を建てたり街を造ったりします。

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 Minecraftは基本的に2つのモードで楽しむゲームです。1つは「クリエイティブモード」で、ブロックを積み上げたり壊したりしながら建物や街を造るものです。しかし、これだけだと単なる「積み木」で、全く面白くありません(実はこれを楽しむプレーヤーも世界中に存在するのですが…)。もう1つのモードは「サバイバルモード」です。自分で造った建物や街にゾンビなどの敵が現れます。アイテムを拾い、複数のアイテムを道具で加工することで新たなアイテムを手に入れる。そして、その新たなアイテムで敵をやっつけて生き残っていきます。これが、やってみると結構面白いのです(あくまで個人の感想ですが)。

拡張機能とプログラミング

 Minecraftには、第三者が作成した拡張プログラム(MOD)を導入できる機能があります。さまざまなMODがインターネット上に公開されている中で、特に盛んなのがプログラミングを学習するためのMODです。これを導入すると、例えば「Lua」や「Python」などのプログラム言語でMinecraftの世界を操作することができます。また、MODの中には、プログラムコードを埋め込めるブロックを作ることができるものがあり、そのブロックを並べて連動させることで、プレーヤーが近づくと開く自動扉などの“ロジカル”な仕組みを有する構造物を造ることができます。