伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役、サイバー大学客員講師、サートプロ IoT技術講師、IoT検定制度委員会メンバー
伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役、サイバー大学客員講師、サートプロ IoT技術講師、IoT検定制度委員会メンバー
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 本コラムで私が一貫して言い続けていること。それは次の2つです。まず、「IoT(Internet of Things)や人工知能(AI)のスキルを持つ人材が、これからの企業の未来を決める」ということ。もう1つは、「IoTやAIのスキルを持つ人材は、時が経つにつれて枯渇していき、激しい人材の争奪戦が起こる」ということです。

 私は講師を務める「技術者塾」などの講座で何度も紹介しているのですが、「AI」というキーワードでインターネットを検索すれば、年収1000万円以上の求人が数多く出てきます。かつ、その求人を出している企業はほとんどが外資系企業です。例えば、2017年6月11日付の日本経済新聞には、「人工知能(AI)機能の拡充を急ぐ米フェイスブック。今年採用するAI研究者の初任給が年30万ドル(約3300万円)を超えた」という記事が掲載されました。まさに、優秀な人材の争奪戦が世界規模で始まったと言えます。

IoT人材とは

 ここで、今後枯渇するであろう「IoT人材」や「AI人材」とはどのような人材なのかについて整理しましょう。IoT化に必要な人材は、ITで求められる人材とは要求されるスキルが全く違います。IoTではソフトウエアやハードウエア、データ分析、ネットワークの知識を総合的に持ち合わせている必要があります。しかし、実際にこれら全ての分野において、専門家レベルの知識を持ち合わせている人は、日本にはほとんどいないでしょう。

 では今後、IoT人材やAI人材を獲得するにはどうすればよいのか。それは、必要な幅広い分野の知識を「それなりに」持ちつつ、未経験の技術を素早く習得し、自分自身でリスク管理を行うことができて、高い問題解決力を持った人材を探すことです。今はまだほとんどいないこうした人材に最も速く到達できそうな職種の1つは、ITコンサルタントではないでしょうか。IoT人材になるには知識量も重要ですが、さまざまな問題を解決した経験と、全分野で共通するアーキテクチャーやリスク管理などの考え方をよく理解していることがさらに重要です。もっと分かりやすく言えば、自己研鑽に日々励み、能動的に動く人材でなければお話にならないということです。

AI人材とは

 必要とされるAI人材には2種類あります。1つは、AIにおけるディープラーニングやサポートベクターマシン(SVM)などのアルゴリズムを、より効率的に、かつ精度を高める基礎研究を行う人材(研究者)。もう1つは、AIを実際の製品やサービスなどに適用する応用研究を行う技術者です。前者の基礎研究を行う研究者は、大学院の博士課程などで専門分野の教育を受けた人と考えてほぼ問題ありません。このレベルの人材を社内に必要とするのは大企業の一部だと思います。

 一方、後者の応用研究を行う技術者は、一般の技術者です。「研究者」と呼ばない理由は、学会論文を書く水準の力を求められてないからです。実際に役立つレベルのAIのソフトウエアを開発できればよいので、基礎を理解しているエンジニアであれば、統計分析の基礎とプログラムを勉強すれば十分にこの人材になれます。