マイクロコントローラーの使いこなしが必須に

 このように、IoTの時代に入り、世界トップレベルの技術者がマイクロコントローラーを使った「ものづくり」の世界を構築し始めました。これにより、マイクロコントローラーの領域が飛躍的に進化しつつあります。

 例えば、技術者の間で話題になっているのは、中国Espressif Systems社が開発する「ESP32」と呼ばれるSoC(system on a chip)です。Wi-Fi通信とBluetooth通信ができることに加えて、240 MHzのデュアルコアCPUを搭載しています。しかし、魅力はなんと言っても、約2cm角程度の大きさ(小ささ)と、10米ドルを切る安さです。また、クラウドファンディングのWebサイト「Kickstarter」のプロジェクトでブームを巻き起こしている「Teensy」と呼ばれるマイクロコントローラーも話題です。例えば、「Teensy3.6」は英ARM Holdings(ARM)社製180 MHzの「Cortex-M4」を搭載しているため、小型でありながら非常に省電力である上に、高い処理性能を備えています。

 こうしたマイクロコントローラーを使えば、クレジットカードの半分以下の大きさのデバイスであっても、かなりの機能を実現できます。例えば、電磁波であれば音のセンシングとデータ解析の両方が可能です。さらに、無線を使ってデータを遠くに送信することもできます。

 この数年で世界はここまで変わっているのです。

 急速に進化するこうしたマイクロコントローラーも、素人の目にはただの電子回路にしか映らないでしょう。しかし、Arduinoなどに慣れ親しみ、トップレベルの技術者と交流がある人にとっては夢の機械であり、新しい世界を切り開くツールなのです。そして、今やマイクロコントローラーを使いこなすことは技術者にとって「常識」となりつつあります。

 技術は「頭だけで学ぶもの」でも、「頭だけで考えるもの」でもなく、「手を動かすもの」である、と私が訴える理由はここにあります。そろそろ、日本企業も、「本物の技術者」と「本物の技術」を育て、かつてそうであったように、新たな価値を提供する「ものづくり」を始めるべきではないでしょうか。

 決して、自分はシステム構築さえやればよいと、殻に閉じこもっていてはいけません。IoT全般が分からない技術者に技術の価値は測れないし、新たな価値は創造できない──。これからのIoT時代はこうなると私は確信しています。