IoT(Internet of Things)のブームに乗り、最近「Raspberry Pi」のような小型のコンピューターが流行しています。これまで電気製品で制御を担当してきたのはICでした。それに代わって、今はコンピューターがさまざまな部品を制御する方向に変わりつつあります。
電気信号を送受信するという意味において、IC制御とコンピューター制御はそう変わりはありません。しかし、基本的にICは安価である一方、処理性能や搭載されているメモリーはかなり小さい。それに比べてコンピューターはRaspberry Piのような名刺サイズ大の小型のものでもクロック周波数は1GHz以上あり、メモリーは1Gバイト以上と大きなものを搭載しています。
IC制御とコンピューター制御の違い
大きな違いは、コンピューター制御の場合、補助記憶装置(多くはSDカードなどのメモリーカード)を搭載し、OSをインストールしているという点です。これにより、OS上でプログラムを動かし、複数のプログラムを効率良く動作させることができます。加えて、リリース(発売)した後でもソフトウエアであるファームウエアを自律的に更新することが可能です。このことはIoTにおいて非常に重要です。例えば、IoT機器やスマート製品(インターネットにつながり、直感的に利用できる電気製品)では、他社の製品やさまざまなシステムと連携することが求められます。他の製品やシステムと連携するときには、新しいプロトコルや新しい要求に対応することなど、あらゆる面で柔軟性が求められます。このためには「拡張機器の追加」や「新しいプログラムの追加インストール」などに対応する機能が必要です。
目まぐるしく技術が進化する時代において、新しい機能を追加できない製品は、たとえ故障しなくてもすぐに利用価値がなくなります。新機能を追加できないということは、製品寿命が非常に短くなるということです。これでは顧客からの信頼を大きく下げることになりかねません。
新しいプログラムを追加インストールできないと、セキュリティーに関するリスクも高まります。IoT時代には、電気製品はソフトウエアの更新に手間がかかるため、サイバー攻撃の標的になりやすいと想定されています。従って、セキュリティーホールが存在する場合にどのように対処するかが課題になるのです。
この課題を解決するには、ソフトウエアやファームウエアを更新する必要があります。しかし、その作業を機器ごとに人間が行うというのは、多くの機器を取り扱うIoT時代には現実的ではありません。そこでOSに、状況に応じてある程度自律的に「セキュリティー対策を行う」「攻撃を検知する」「ソフトウエアを更新する」といった機能が求められます。こうした「プッシュ型」のセキュリティー対策をメーカーが行うためには、製品側にOSを搭載する必要があるのです。